第1話 始まりの戦い
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こちらも頭を下げる。
「招待状を受け取った舞霧氷雨です。………ガンプラの依頼と書かれていましたが、どのような?」
「それは吾郎様に直接聞かれるとよろしいでしょう」
「『黒い翼』本人からですか」
まだ長い年月を生きていない氷雨だったが、それでも耳に入ってくるほど有名な人物だった。
『黒い翼』 三条吾郎
第1回ガンプラバトル世界選手権大会から第3回大会まで常にベスト4にランクインし、二代目メイジン・カワグチやマッケンジー准将とも互角に渡り合った猛者だ。既に引退しており、家業のプラスチック製の製品を扱う企業の会長だったはずだ。
(そんな大物が俺にどんな用が有るんだか)
内心首を傾げつつも、原沢に連れられて屋敷の中へと進む。
「流石は日本で一二を競うケミカル企業ですね」
「ええ、当主様の手腕は素晴らしいものですよ」
他愛のない雑談を続けながら、辺りを見回す。
宮殿と見紛う豪華な内装に、様々なガンプラが並べられている。UCは勿論のこと、W 、X、種、00などのガンプラが広い筈のフロントに所狭しと並んでいる。
そのどれもが丁寧に作り込まれているのだ。
(ああ、こんな家に住めるのは幸せそうだな………)
内心非常に羨ましく思っていると、フロントのすぐ横にある応接間に通された。
「当主様をお呼びしますので、ここでしばらくお待ち下さい。早希、お茶を」
「はい。わかりました」
執事の原沢が退室するのと入れ替わりで、部屋に控えていたメイド服の少女が紅茶を運んできた。早希と呼ばれた少女は俺と同じくらいの年齢か。
綺麗な黒髪を大人しめの髪留めで纏めている。中々可愛らしい少女だ。
が、それよりも気になることがあった。目の前で主張している筐体を指差す。
「あの、これって………」
「うん。バトルシステムだよ。はい紅茶」
フランクな言葉遣いも気にならないほど、広めの応接室で主張するバトルシステムに圧倒される。まさかここまでとは思っていなかったのだ。
「ねえ、お客様ってガンプラファイトやるの?」
「ああ、一応やるけど?」
お喋りが好きなのか、好奇心旺盛なのか、気になって仕方がないといった風に尋ねてくる。少し意表を突かれながらも、頷くと、嬉しそうな表情を浮かべた。
「やった。ねえ、ガンプラバトルしない? この辺りだと学校以外で戦える場所が無いんだよね」
「仕事中じゃないのかとか色々言いたいことは有るけど、別に構わないよ」
「やった。私は原沢早希。ここでメイドのアルバイトをやってるの」
「メイド………」
本当にある職業だったのか………。
「あ、私は当主様の娘のメイドだから、期待しても無駄だよ?」
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