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第一章
虹の服
ノルウェーに古くから残っている話である。
ある村の青年ホッドは恋人のフラキに対してこう約束した。
「服をね。プレゼントするよ」
「服を?」
「そう、服をね」
こう彼女に約束したのである。
「この世に二つとない服をね」
「それってどういう服なの?」
「ええとね」
そう言われるとだった。困ってしまう彼だった。実はこの世に二つとないとは言ってもである。具体的にどんなものなのかは考えていなかったのだ。
それで困ったしまった。しかしそれでも言うのだった。
「あのさ」
「ええ。どんな服なの?」
「もう凄い。神様しか着られないような服だよ」
「神様もって」
「それをあげるから。楽しみにしていてね」
「ええ、わかったわ」
フラギは彼の言葉に素直な笑顔を見せた。
「それじゃあね」
「うん、それじゃあね」
こう話をしたのだった。だが話をしてからだ。彼は後悔することになった。具体的にどんな服にするのかまでは考えていないからである。
それで困り果ててだ。村の長老に知恵を借りることにした。
「何っ、この世に二つとない服か」
「うん、そうなんだ」
小さくなってその長老に話す。長老は大柄で逞しい身体をしている。顔中白い髭だらけだがそれでもだ。身体つきはしっかりとしていた。
「それでだけれど」
「この世に二つとない服」
「ほら、長老はヴィーキングだったじゃない」
「うむ」
「世界のあちこちを回ったよね」
長老にこのことを話す。ヴィーキングは欧州各地を荒らし回ったあの海賊達のことである。
「それだったら知ってるんじゃないかなって」
「いや、どの服も同じじゃよ」
だが彼はこうホッドに言うのだった。
「正直言ってな」
「そうなんだ」
「麻にしても。東の方から来た絹にしてもな」
「どれも同じなのかい?」
「そうじゃ、同じじゃ」
長老はホッドに話す。
「どれもな」
「じゃあ特別な服はないのかい?」
「特別と言っても色々な意味があるじゃろう」
「もうね。あれだよ」
ホッドはたまりかねた口調でだ。長老に話した。
「あれ。人が着ないような服がいいな」
「人がというと」
「だって。人が着る服は皆同じなんだろう?」
長老にこう返すのである。
「それだったらさ。その人が着ないような服をさ」
「それがいいというのか」
「うん、だったらそれだよ」
また言う彼だった。
「神様が着るみたいな。そんな服がいいよ」
「そうか、わかった」
「わかったって?」
「そういう服なら一つ知っておる」
長老ははっきりとした顔になって彼に話してきた。
「手に入れるのはかなり難しいがそれでもよいか?」
「うん、いいよ」
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