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リメインズ -Remains-
5話「始まりを知らない男」
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た。

「月か……そういえば、今日は満月だな」

 偶には月を見上げるのもいいかもしれない。夜空の星を数えていれば、いずれ飽きて眠くもなるだろう。
 宿のバルコニーに続く戸を開ける。心地よい夜風が体を扇いだ。
 風が強い日は雲も少ない。絶好の月見日和だ。

 天空高くには、今日も満天の星空が相変わらず輝いている。
 この時期はたしか南の空に「竜座」と呼ばれる星座が見える筈だが、数年前からその星のいくつかがブランクになっている。学者によると星が消滅したので見えなくなったのではないかという話だが、真偽のほどは定かではない。
 この世界では星さえも消えることがあると言うのに、俺はいつまでこのままなのか、と自問する。

『いつまで魔物を殺し回って返り血を浴び続ける気なんだ?』

 いつまでと問われれば、きっと俺はいつまでもと答えるだろう。
 今の俺はそれしか望んでいない。酒も女も望まない。ただ魔物を殺せればいい。どうしようもなく心地の良い刹那的な快楽が、俺の心を掴んで離さない。

 ――本当に、いつまで続ければ気が済むんだろうな。

「珍しいですね、ブラッドさんが星を見るなんて」

 不意に、背中に聞き覚えのある子鳥がさえずるような声がかかった。
 
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