5部分:第五章
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「話したのね」
「そうです。全てはこれからだと」
「そうね。恋は成就するだけではないからね」
「はじまりと。終わりです」
この二つを話すのだった。
「それをです」
「女同士であっても恋は恋だからね」
「それは成就されて然るべきものですから」
「その通りよ。貴方はいいものを見たわ」
「ええ。本当に」
「そして今それを喜んで。一人で乾杯していたのね」
「貴女が来られることは予想外でした」
それはだというのだ。速水は己のワインを一口含んだうえで述べた。
そしてだった。目の前の皿の上にあるナッツを見た。それを見ての言葉だった。
「それはです」
「あら、そうなの」
「そうです。まさかここに来られるとは」
「気が向いてよ。だからよ」
こう話してだった。そうしてだった。
沙耶香も一杯飲む。それからだった。また話すのだった。
「来たのだけれどね」
「そうですか」
「ええ、それに」
「それにですね」
「いい話を見させてもらって。それで」
「乾杯ですね」
速水から沙耶香に話した。
「そういうことですね」
「そうよ。それじゃあね」
「ええ、それでは」
速水は杯を出してきた。そしてだった。
沙耶香もそうしてきた。それを二人で打ち合わせてだ。
二人でそのワインを飲む。それから二人で祝うのだった。幸せな恋の成就とこれからの幸せをだ。その二つを祝うのであった。
払われる迷い 完
2010・10・27
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