1部分:第一章
[1/2]
[1]次 最後 [2]次話
第一章
払われる迷い
今は違う。昔とは。
ふとだ。速水丈太郎はこんなことを考えた。黒い髪で顔の左半分を隠している。右だけが見えているが色は白く顔は細い。顎はやや先に尖っている。鼻は高く黒い目は切れ長だ。眉は細くその切れ長の目に従っている。
青いスーツに裏地が赤のコートにだ。白いブラウスに赤いネクタイをしている。その彼が今一人の女性を前にしていた。そして彼女の話を聞いているのだ。
その女性はだ。こんなことを言うのだった。細い眉にややふっくらとした顔をしている。優しい穏やかな顔をしており髪は黒くロングにしている。
全体的に穏やかな雰囲気の彼女がだ。速水に話していたのだ。
「今はですね」
「今はなのですね」
「はい、昔と違います」
こう彼に話す。それでそう考えた速水だったのだ。
彼女はだ。さらにこう言うのだった。
「そう思います」
「過去と現在は違いますよ」
速水はここで彼女にこう告げた。
「それは事実です」
「そうですね」
「そして今の貴女は」
彼女に言う。今彼は自分の仕事場にいてそこで彼女の話を聞いているのだ。銀座のビルの一室にあるその個人事務所においてだ。彼は占いの場を持っている。そこでいつも話をしているのである。つまり彼女は客というわけだ。
その彼女の話を聞いてだ。彼は言うのだった。
「何をお望みですか」
「何をですか」
「貴女の過去が今の貴女にどう関わるかですね」
「はい、それです」
彼女は俯いた顔で速水の言葉に頷いた。
「あの時の私は男の人が好きでした」
「恋愛ですね」
「しかし今の私はです」
ここでだ。顔を曇らせてだった。彼女はこう言うのだった。
「男の人ではなく」
「男の人ではないというと」
「女の人が好きになってしまいました」
そうなったというのである。
「それでその人と」
「一緒になえるかどうかですか」
「どうなるのでしょうか」
身体を前に乗り出してだ。速水に問うてきた。
「そのことは」
「ではです」
「では?」
「そのことを占わせてもらいます」
こう申し出る速水だった。そのうえでまた言うのだった。
「ここは占い師の場所ですから」
「はい、私もです」
ここで彼女も頷いてきた。そのうえでの言葉だった。
「それで占ってもらいたくて来ました」
「その恋の行方をですね」
「御願いします。宜しいでしょうか」
「私は誰も拒むことはありません」
速水は眉を顰めさせる彼女に穏やかな笑みと共に告げた。
「誰もです。来て頂いた方はです」
「その人は」
「誰でも占わせて頂きます」
そうするというのである。
「ですから」
「そうですか。それでは」
「では早速占わせて
[1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ