暁 〜小説投稿サイト〜
フェイト・イミテーション ~異世界に集う英雄たち〜
ゼロの使い魔編
第一章 土くれのフーケ
想起
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にビクッと震えた。恐る恐る振り返ってみると、例の使い魔が立っていた。いつの間に!?どうしてここが?いや、そもそもなぜ私の正体を?さまざまな疑問が渦巻き、それは無意識に口から出た。

「あ、アンタは・・・一体・・・?」
「・・・出来損ないの魔術師だ。」
「・・・・・・。」

 しばらくポカーンとしていたフーケ―――ロングビルはやがてフッと諦めたように笑みをこぼした。魔術師という言葉に聞き覚えはないが、自分が相手の力を見誤ったのはどうやら間違いないらしい。誤魔化すことも難しそうだ。

「一つだけ聞かせて頂戴。何で私がフーケだと分かったの?」
「簡単だ。あんたが朝から捜索を始めたとしても、こんな馬車で数時間かかるような場所を探しあてて戻ってくるなんて不可能だからな。後は、体格や髪の色なんかで何となく予想したってわけだ。」
「・・・そう、誤魔化せると思ったんだけどね。いいわ、アタシはもう魔力切れだし好きになさい。」

 ごめんね、テファ・・・とロングビルは、こっそり悲しそうに呟いた。
いやいや、俺が気付いているくらいだからあの人も大体分かってるんじゃないか?と思いながら、架は言葉を発した。どの道架にはフーケをここで捕まえるつもりはない。

「未練は・・・ないのか?」
「そうだね・・・最後にテファ―――妹の顔が見たかったけど、しかた「そうか、じゃあ行け。」ない・・・って、ええ!!!??」
「だから妹に会いたいんだろ。会ってくればいいじゃないか。」
「い、いやいや、でも、アタシはもう・・・」
「生憎、俺ももう魔力切れでな。正直お前をふん縛る力も残っていない。」
「・・・馬鹿にしてんの?」

 明らかな惚けた口調に、ロングビルは声に怒りの色を混ぜた。妹に会いたいのは事実だが、情けをかけられたくない程度には彼女にもプライドがあった。
 すると、目の前の使い魔は不意に悲しそうな顔をして、絞り出すような声で言った。

「少なくとも、そいつもお前と一緒にいたいと思っているだろうさ。そこまで思われているんだったら、なおさらな。」

 ―――――私にも妹のような存在がいますの。あの子がいるから、私は今も頑張っていけるんです。
 ―――――そう、そのためなら何だってして見せる・・・!


ロングビルはここに来る前に言った自分の言葉を思い出した。あれは、正体を隠した中からでた、数少ない本心からの言葉だった。

 ――――――いってらっしゃい、マチルダ姉さん。

 そして、自分が故郷を去るときの妹の言葉。その寂しそうな笑顔に罪悪感を覚えながらも、これも貴女のため、と思い頑張ってきた。でも・・・・・。
 トドメとなったのは架の本当につらそうに言った一言だった。

「俺は・・・もう、叶わないことだろうけど・・・」


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