6部分:第六章
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第六章
何時の間にか出店からしっかりとした店になっていた。そうして骨董品や日本の品を扱っているのであった。
そこに入るとだ。彼を気さくな笑顔で迎えてこう言うのだった。
「いらっしゃい。今日は何を買われますか」
「また急に店が大きくなったな」
「まあ。商売が成功しましたから」
「日本人は商売上手と聞いているがな」
「いやあ、運がよかっただけです」
日本人の若者は自分の左手を頭の後ろにやって笑顔で話す。
「それだけです」
「謙遜か?」
「いえ、事実です」
それだというのである。彼はだ。
「まあそういうことなんで」
「そう言うか」
「はい。それでなんですが」
「何を買いに来たかだな」
「これなんかどうですか?」
言いながら出してきたのはだ。紙の傘だった。
「日本古来の傘ですけれど」
「何年ものだ?」
「百五十年に作られたものです」
若者は笑顔で彼に話した。
「凄いですよ、これも」
「そんなものがよく売っていたな」
「日本には色々なものがありますから」
「それはいいのだが」
スコフコスは難しい顔をして述べた。
「だがな」
「だが、といいますと」
「この前の筆だが」
その話をだ。若者にするのだった。
「あれはとんでもないものだったぞ」
「あれっ、そうだったんですか」
「何も知らなかったのか」
「って何かあったんですか?」
若者は首を傾げさせながらスコフコスに問い返した。
「あの百年ものの筆に」
「何も知らないのか」
「ですから何が」
「知らないのならいい」
それ以上は言うことを止めた彼だった。その表情と目から彼が本当に何も知らないことを察したからだ。それでなのだった。
「それはな。ただ」
「ただ?」
「もうそうした古いものはな」
「それは?」
「売るな」
こう彼に忠告するのだった。
「わかったな」
「そうだ、売るな」
真剣な顔で彼に述べる。
「何かと厄介なことになるぞ」
「そうなんですか。まあそう言うのなら」
若者もだった。彼の言葉に何かを感じてだ。そうしてそのうえで応えるのだった。
「止めますけれどね。他のものも売ればいいんですし」
「そうしてくれるか」
「はい、いいです」
また言う若者だった。
「何かあるみたいですしね」
「そういうことでな」
「やっぱり古いものって何かあるみたいですね」
若者は考える顔になって述べた。
「人間の世界じゃ簡単に話せないことが」
「そうだろうな」
筆のことは隠してだった。スコフコスも話す。
「それはな。まあそれでだ」
「はい、それで」
「その傘の他に何かあるか」
その百五十年ものの傘が収められるのを見ながら話す。
「見せてくれるか」
「ええ、それならですね」
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