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歪みすぎた聖杯戦争
2話 運命は狂いだす
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イギリス時計塔。魔術協会の総本山であり、魔術を学び『根源』を目指す者たちにとっての最高学府である。聖堂教会と勢力を二分する一大組織だ。

「バカにしやがって! バカにしやがって! バカにしやがって??あれが講師のやることか??
あいつ、僕の論文を読んで嫉妬したんだ! 僕の才能を恐れたんだだからみんなの前であんな真似を……」

ウェイバー・ベルベットの才能は、誰にも理解されたためしがなかった。
魔術師として、さして名のある家門の出自でもなく、優秀な師に恵まれたわけでもない少年が、なかば独学で修行を重ね、ついには全世界の魔術師を束ねる魔術協会の総本部、通称『時計塔』の名で知られるロンドンの最高学府に招聘されるまでに到ったという偉業を、ウェイバーは何人たりとも及ばぬ栄光であると信じて疑わなかったし、そんな自分の才能を人一倍に誇っていた。
我こそは時計塔開闢以来の風雲児として誰もが刮目するべき生徒であると、少なくともウェイバー個人はそう確信していた。確かにベルベット家の魔術師としての血統は、まだ三代しか続いていない。
先代から世継ぎへと受け継がれ、蓄積されていく魔術刻印の密度も、世代を重ねることで少しずつ開拓されていく魔術回路の数も、ウェイバーは由緒正しい魔術師の家門の末裔たちには些か劣るかもしれない。時計塔の奨学生には、六代以上も血統を重ねた名門の連中が珍しくもなく在籍している。
魔術の秘奥とは一代で成せるものではなく、親は生涯を通じた鍛錬の成果を子へと引き継がせることで完成を目指す。代を重ねた魔導の家門ほど力を持つのはそのせいだ。
また、すべての術者が生まれながらにして持ち合わせる量が決定づけられてしまう魔術回路の数についても、歴史ある名家の連中は優生学的な手段に訴えてまで子孫の回路を増やすよう腐心してきたのだから、当然またここでも新興の家系とは格差がつく。
つまり、魔術の世界とは出自によって優劣が概ね決定されてしまう……というのが通説である。
だが、ウェイバーの認識は違った。歴史の差などというものは経験の密度によっていくらでも覆せるものである。
たとえ際立った数の魔術回路を持ち合わせていなくても、術に対するより深い理解と、より手際の良い魔力の運用ができるなら、生来の素養の差などいかようにも埋め合わせがきく──と、ウェイバーは固く信じて疑わなかったし、自らがその好例たらんとして、ひときわ積極的に自分の才能を誇示するように努めてきた。だが、現実はどこまでも過酷だった。血統の古さばかりを鼻にかける優等生たちと、そんな名門への阿諛追従にばかり明け暮れる取り巻きども。
そんな連中こそが時計塔の主流であり、ひいては魔術協会の性格を完全に決定づけていた。講師たちとて例外ではない。
名門出身の弟子ばかりに期待を託し、ウェイバーのような''血の浅
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