第十話。超えた限界。勇気の在り方……
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いた。
「おりゃあ!」
続け様に、音央を囲む村人の一人の胴をスクラマサクスで切断した。
人の姿をしている為、切り裂く際はかなりの抵抗があったが彼らを救う術を持たない俺は、心の底から謝罪しながらスクラマサクスを振るう。
今の俺は女性を傷つけられないが、相手が男性ならば話は別だ。
とはいえ、男性の身体を切断するなんて事は本来ならばやりたくない行為だ。
武偵法9条を破る……それは武偵が最もしてはいけない違反行為だからな。
本当なら彼らも救いたい。救いたいが、全員を救う時間はない。
俺の能力は対象に触れる必要があるし、一度に改変出来る人数にも制限がある。
救いたいのに、救えない。
全知全能の神ではない俺は全てを救うなんて事は出来ないから。
それに、人の姿をしているが彼らはみんなすでに死んでいる死人だからな。
だから殺人ではない。
そう自分に言い聞かせる。
エゴだと言う事は解っているけどな。
「はあぁぁぁー!」
スクラマサクスを振るい、音央や俺を襲おうとしていた村人を次々と切り裂いていく。
無我夢中でひたすら脚と腕を動かす。
数分で音央を取り囲っていた村人達を全員倒した。
「ハァハァ……」
村人の数は6人だったが、終わった後の疲労は凄まじかった。
肉体的な疲労感、筋繊維を痛めたせいだからかも知れないがそれだけじゃない。
何よりそれとは別の疲労感があるからだ。
これは精神的な疲れだ。
初めて人を殺した。
相手はすでに死んでいる人の残りカスみたいなものだが、それでも存在を奪った事実は変わらない。
「ハァハァ……キツイな」
予想以上に苦しいな。これは。
だが逃げ出すなんて出来ない。
一之江は当たり前のようにこんな事を続けてきたんだ。
彼女一人にこの重みを背負わせたまま、自分一人だけ平穏に暮らすなんて出来るわけない。
「ご主人様……」
「モンジ……ごめん。
ごめん……モンジ……」
俺を呼ぶ声が聞こえたのでそちらを振り返ると、悲しそうな顔をしたリサと泣きながら謝罪をする音央がすぐ側にいた。人を殺した現場を見た彼女らに、俺はなんて声をかければいいんだ。
甘く囁くべきか、斬ったのは人の姿をした残滓だと言うべきか、あるいは……。
どういった説明をするべきか、悩みながらも音央の手に触れてハンカチを差し出した。
そして差し出したハンカチで目元を拭ってやった。
「……なんて顔、してんのよ」
涙を拭ってやると、音央はいつもと変わらない感じで俺を見上げてきた。
「あんたは悪くない。
さっきのあんたの動きは人間離れしていてちょっと怖かったけど……でも、大丈夫。
あんたは間違ってない。あんたのおかげで私は無事なんだから」
「そうだぜ?モンジがいなかったら
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