3部分:第三章
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第三章
「それでは。もう」
「眠るのだ」
また優しい声を女に対してかけた。
「いいな」
「わかりました」
こうして鬼は消えた。宇治橋の鬼女は完全に姿を消した。清明はそれを見届けてから道長のところに戻った。そのうえで彼に対して仔細を述べるのであった。
「おなごが鬼になったのか」
「左様です」
そう彼に述べる。
「全ては降魔刀が教えてくれました」
「刀がか」
「降魔刀は斬る際にその者の邪念を私に教えてくれます」
「それでか。成程な」
「そういうことです。それで全てがわかったのです」
彼はそう道長に述べるのであった。畏まっているがその目の鋭い輝きは変わらない。
「それで何故鬼になったのじゃ?」
「全ては妄執と嫉妬からです」
「妄執と嫉妬か」
「はい」
清明は答えた。
「もとは都にいる女房だったのですが」
「女房か。それでは」
道長は鬼女が元々女房と聞いて事情を察した。そうしてそれを言うのであった。
「あれじゃな。亭主が浮気をしたのじゃな」
「左様です。それへの嫉妬と夫への妄執から貴船神社に祈願し三十七日の間宇治川で水ごりをしてその結果として」
「鬼になったと」
「そういう次第でございます」
そこまで話してあらためて述べるのであった。
「おわかりでしょうか」
「わかった。それなら納得がいく」
道長も女のことはそれなりにわかっている。だからこそ頷くことができたのだ。
「それで相手を呪い殺したのじゃな」
「はい、その通りです」
その言葉に対しても答えた。
「その後でその宇治川に身を投げたのですが」
「死にきれんかったのだな」
「そうして遂には鬼になったのです」
妄執と嫉妬の強さのあまり死にきれずそうして鬼になったのだ。人は時としてその心のせいで鬼となる。今度もそうなのであった。
「それで鬼は成仏したのじゃな」
「はい」
静かにその言葉にも答えた。
「一応は終わりました。ですが」
「ですが?」
「関白様、お情けを頂きたいのですが」
ここまで話したうえでまた道長に言うのであった。
「お情けじゃと」
「女のこと、どう思われますか」
また道長に対して問うた。
「哀れだとは思っておるが」
「では尚更お情けを頂きとうございます」
またそう述べる。
「是非共」
「ではどうするのじゃ」
「女の霊を鎮めましょう」
彼が言うのはそれであった。静かに道長に対してまた述べる。
「それで完全な終わりとなるのですが」
「そうじゃな。それは」
「では。宜しいですね」
「うむ、そうしよう」
伊達に関白になっているわけではない。だからこそ清明の今の言葉に頷くことができたのであった。穏やかで澄んだ心でもって。
「では神社に祭るとしよう」
「はい
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