ヒトランダム
入れ替わりのはじまり
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翌朝、俺は昨日起きた八重樫と永瀬の入れ替わりなどなかったことにして通学した。
が、世の中そんなにきれいには終わらせてくれなかった。
学校の最寄り駅で降りた俺は前方に稲葉の姿を見つける。そして駆け寄る。
「よう、稲葉」
「ああ、武藤か」
声をかけたはいいが特に話す内容はなく、変化なく二人して無言で歩く。
まあ強いて言うなら、途中にカップルで登校している二人組を見かけて、わずかに距離を開けたくらいのことはあったが。
本当ならば昨日のことについて話し合いたかったのだが、周りには大勢の山星高生、どこから話が漏れるか分かったものではないので口をつぐむ。
学校前の長い坂に差し掛かった時、ふと視界が暗転した。
次の瞬間、何か違和感を感じた。いつもと同じ光景なはずなのに少しずれているような。
そして気が付く。さっきまでに比べて視界が低いことに。
もしかしてと思い先ほどまで稲葉がいた右に視線を向けるがそこには誰もいない。慌てて左を見ると、そこにいたのは稲葉ではなく俺だった。
叫びそうになるが、理性をもってして抑え込む。ここで急に大声を挙げたら周りに注目され怪しまれること間違いなし、その結果入れ替わりに気付かれる可能性も出てくる。そう察したからであるのだが……
「はあぁぁぁぁ!?!?!?!?」
どうやら稲葉は自制できなかったらしい。というか、今は俺の身体なのだからこの先怪しまれるのは俺ということになる。まったく面倒なことを。
だが、予想していたより集まった視線は少なかったので、俺は自分の手をつかんで学校前の坂道を全力ダッシュする。そしてそのまま教室に行かずに部室に直行する。早めに来ていたので少々の時間はあるが、昨日の様子からして授業開始までに元に戻る可能性は低い。
他の二件の時は大勢に晒されることはなかったが、授業を受ければ必然的に大勢の前に晒されることになり結果として入れ替わりがばれるといった事態になりかねない。だからといって授業をさぼってしまえばそれはそれで目立つこととなる。どちらが最善かは分からない。
よってこのまま部室でこの後どうするかを稲葉と相談することにした。
「で、どうする?このまま授業サボるか入れ替わったまま授業を受けるか」
「アタシとしては授業に出ることは反対だ。こんな訳が分からん状態で人前に出られそうにない。おとなしく伊織や唯たちの時みたいに元に戻るのを待った方がいいだろう」
稲葉の判断は極めて冷静で理性的で妥当だった。
「そうだな。ならせめてクラスが同じ永瀬か八重樫くらいには連絡しておくか」
そう言いポケットを探り稲葉の携帯を取り出したその時、再び視界が暗転した。
視界が戻った時には目の前には稲葉がいた。元に戻ったかどうかを確かめるために声を出してみる。
よし、
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