三話 少年少女たちの日常
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った表情を向けながら疑問を発した。
「トールさんは何をしに下の層にまで行かれたんですか?」
「ああ、たいしたことじゃあないよ」
殊更に落ち着き払った声調でシュウが答える。パーティーメンバーである少年たちにとって今のトールの行動は慣れたもので、大事ではないことも察しており、彼が本当に助けが必要なときは仲間を頼ることができる人間であることも同時に理解していた。
「トール、ここの集まりにまだ参加できないぐらいのレベルのプレイヤーの支援をやってるらしくてな、たまにああしてヘルプで呼ばれていくことがあるんだ」
「それ、ここでやってる集会みたいな形じゃなくて個人でってこと?いくらなんでも大変すぎない?それ」
「……ゲームクリアのために自分にできることをやりたいんだと。俺たちもあんまり無理するなよって言ってるんだけど、あいつ生真面目すぎるからさ」
その言葉に少女たちは視線を落とし言葉を失ってしまう。ゲームクリア、そして現実世界への帰還はデスゲームと化したSAOのプレイヤー共通の目的であり願いだ。それを叶えようと奔走する少年の行いを否定することは容易くない。
「そっか、トール、そんなことまでしてたんだ」
ぽつりとマリが漏らした呟き、しばし残された四人の間に沈黙が落ちる中、不意にマリが先程のトールを思わせる動きで宙を見つめると、――おそらく彼女の視界に本人にしか見えないメッセージ着信の表示がポップアップしたのだろう、これまたトールと動作をおなじくして掲げた右手を降りメニューウィンドウを現出させた。
「あー、あたしも呼び出しだ、今日中に防具の修繕とオーダーメイドの依頼」
「メッセージまで飛ばしてきたのかよ、どんな客なんだ」
「防具破損させちゃったみたいね、常連のお客さんだから無下にはできないし……あーあ」
諦めたように嘆息するとマリは表示されたままのメニューウィンドウを続けて操作する。所持アイテムのオブジェクト化を実行したらしく、手元に木製の丸い板のようなものが出現した。
「シュウ、これ頼まれてたいつものお代は今度でいいわ」
「ん、いいのか?」
木の板のようなものを受け取りながらシュウが聞くとマリが問題ないというように手を振りながら答える。
「いいわよ、これぐらい、たいして素材もかかってないしね。ごめんリコ、お客さん急ぎみたいだから先に戻るわ」
「帰り道途中まで同じだし、私も一緒に帰ろうか?」
「大丈夫よ、走って帰るし付き合わなくったっていいわ。あんた達、おごりついでにリコ送っていってよ、シュウはそこの赤犬が送り狼にならないように見張っておいてね、それじゃ!」
「赤……!?」
「ああ、気をつけて帰れよ」
赤く染めた髪を指してのことだろうが、少女が去
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