三話 少年少女たちの日常
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ないな」
悪びれた様子もなくさらりと返した少年に隣のトールがため息をつきながら肩を落としていた。
「シュウ……また酒なんて飲んでるのか、リアルじゃ未成年なんだろう?癖でもついたらどうするんだ」
「SAOじゃ酔ったりしないんだからいいじゃないか、慣れれば悪くないぞ」
酒酔い、という状態が存在しないSAOの世界においてはどれだけアルコール系飲料を摂取しようと酩酊してしまうことはない。しかしそれでも生真面目な性格であるトールなど未成年の飲酒にいい顔をしないプレイヤーは少なくない。
「相変わらずね、でもバーで飲んでるシュウってなんだか雰囲気あるのよね、なんていうか……洋画のワンシーンみたいっていうか」
表現に困っているのかもどかしそうな言葉にシュウはああ、と呟き、グラスを置く。
「雰囲気か、クォーターだからそう見えるのかもな」
「「え?」」
「親父がドイツ人とのハーフなんだよ、だから俺は四分の一ドイツ人ということになるな」
事も無げに語られた内容にシュウ以外の四人は目を丸くしてしまう。多くのMMOの慣習に従いSAOにおいてもプレイヤーのリアルを詮索するようなことは避けられる傾向があった。それ故にパーティーメンバーなどであっても普段知ることの無い個人のリアル事情話が飛び出すのは珍しいことだった。
「へー、なんかカッコイイなそれ」
「初めて顔見たとき違和感あったのそれがあるのかな?ソース顔っていうんだっけ」
「うーん、シュウ君暑苦しいってイメージはないからちょっと違うんじゃないかな」
などと盛り上がる少年少女たちだがその脇で思考停止したようにぼうっとしていたトールがハッと自失から返ると再びシュウの飲酒を咎めようと口を開く。
「いやいやシュウ、よく考えたらそれと飲酒は別問題だ。たとえゲームの中でも守らなくちゃいけない倫理ってものがだな――っ」
言葉を中途で切るとトールは手前の空間の一点を見つめ、急に右手と中指を揃えた右手を掲げ振り下ろし、メインメニュー・ウィンドゥを表示させた。その唐突なアクションにシュウらが不思議そうに見守る中、トールは表情を申し訳なさそうに歪め、カウンター席の丸椅子から立ち上がった。
「急用ができた、ちょっと下の層まで降りてくる」
「一人で大丈夫か?」
「ああ、生死に関わるような問題じゃないから大丈夫だ、シュウ、アルバ、明日朝までに帰れそうにないときはメッセージを送るよ」
「気にすんな、お前も無理するんじゃねえぞ」
「……すまないな、マリちゃん達も急にごめん、先に失礼するよ」
慣れた調子で送り出す仲間たちに苦笑を返しながら足早に酒場からトールは出て行った。その背中を見送りながら事態が掴めていないリコは少年らに不安そうにくも
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