四十二話:“みんな”と分史世界
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ルが二人に話しかける。
『カナンの地に願えば、うまくいくかも……』
『カナンの地?』
『お願いを叶えてくれるふしぎなところ……です』
先程、のローエンに言った時はエレンピオス人を皆殺しにしたいという答えが返って来たので若干警戒して丁寧な口調で答えるエル。そんなエルを守る為に何があっていいように身構えるルドガーだったが、すぐにその構えは意味をなさないものになる。
『ほっほっほ、夢のあるお話ですね。でも人の心を変える力があるとしたら恐ろしいことです』
『人が人である理由がなくなるのだからな』
ローエンの返事はとても優しい物で先程の“ローエン”とは似ても似つかないものだった。そしてそんなローエンの言葉に同調する男も敵意を一切発していないのでホッとするエルとルドガー。そんな二人にジュードが本物のローエンだと言ってからレイアがローエン達にお礼を言う。
『ありがとう、ローエン。ガイアス』
『……アーストだ。今の俺は一介の市井の男。ゆえにアーストと呼んでもらおう』
『エレンピオスの民衆の声を知るために、お忍びで行動されているのです』
アーストとしっかりとレイアに訂正させるガイアスにローエンがそう付け加える。そんなガイアスにジュードが心配そうに話しかける。
『でも、いいのかな? リーゼ・マクシアの王様なのに?』
『王様!? エル、王様って初めて見た!』
ガイアスの正体がリーゼ・マクシアの王様だと分かると目を輝かせるエル。この時期の子どもにとっては王様とは白馬の王子様の様な絵本で登場しない憧れの存在なのだ。その為にエルはこうも興奮しているのである。
そんなエルの姿にリアスは魔王である自分の兄もこのような子供の純粋な憧れの存在であるのだからせめて人前では普段のシスコンを抑えて欲しいと何となしに思ってしまう。
『ありがとう、アースト』
『……それでいい』
『意外と、子供っぽいこだわりがあるようで』
『なにか言ったか?』
『いえいえ』
ルドガーがガイアスに言うとアーストと呼ばれたことに満足そうに頷くガイアス。そんなガイアスにローエンが茶化すように言葉を挟むがガイアスの鋭い眼光に睨まれて笑いながら引き下がる。ローエンは宰相であるので本来であれば王にこのような口をきくことはご法度なのだが、それが許されるのもローエンの人徳なのかもしれない。
その後、ルドガー達は“魔人”の正体はアーストだったという事に気づき、その後、ルドガーの身の回りに起こる不可解な出来事に興味をもったローエンと共に次の情報地である、ヘリオボーグに向かう事になったのである。
『また、お金返さないとね、ルドガー』
『はあ……』
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