四十二話:“みんな”と分史世界
[5/15]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
この猫は鼻でロイヤル猫缶を笑ったのである。ルドガーはこの時まだ知らなかった事なのだがこの猫はかなりのお金持ちの家で暮らしているためにこの程度の餌は食べなれているのだ。その事に気づいたルルはそんな猫に対抗心を燃やしルドガーにある提案をする。
『ナ、ナゥ、ナァー!』
『何? 俺があの世間知らずを連れ出すからそれが終わったらロイヤル猫缶をくれだと? 考えたな、ルル。……よし、それならいいぞ。行って来い、ルル!』
『ナァー!!』
『ルドガー、すごーい! ルルとお話できるんだ! エルにも教えて!』
『いや、今のはルルの方から語り掛けて来たような感じだな。基本的にはわからない』
ルルとの会話を成立させたルドガーにエルがキラキラとした目で教えてと言ってくるが何となくノリで当てたためにルドガーは答えることが出来ずに申し訳なさそうに頭をかく。そんな間にルルは隠れていた猫をあっさりと連れ出すことに成功する。
隠れていた猫も抵抗しようとしたのだが後に猫皇帝の異名をつけられることになるルルの敵ではなかった。そしてルルは猫をレイアに引き渡すと褒美のロイヤル猫缶をうまそうに頬張り始める。
『ユリウス、ゲットー!』
『ユリウス!?』
『そ。この子の名前。ユリウス・ニャンスタンティン三世』
レイアから聞かされた猫の名前にルドガーは悟る。レイアは、ユリウスはユリウスでも猫のユリウスを探し回っていたのだ。そこで今までのことは全部無駄だったことにルドガーはガックリと肩を落とす。
しかし、人の縁とは不思議なもので新聞記者であるレイアはユリウスの情報は知らなかったものの知り合いの情報屋なら知っているかもしれないとユリウスの捜査に協力してくれることになったのである。ユリウスの情報は手に入らなかったが当初の目的である協力者は得られたのでルドガーは満足をしてレイアの知り合いの情報屋に会うためにドヴォールへと向かう事にした。
『……あれ? さっきのネコさんは?』
『しまった、逃げられたぁぁーっ! 折角捕まえたのにぃ〜!』
結局、ユリウス・ニャンスタンティン三世は逃げ出してしまったが元気なレイアはへこまずにすぐに切り替えて歩み始めるのだった。そんな姿にルドガーもなんとなく元気づけられ、若干軽くなった足で歩き出すのだった。
「白音もあの猫ユリウスみたいに知らない人から食べ物を貰っても食べちゃダメよ」
「……だから姉様は私を何だと思っているんですか? ……大体そう言う姉様はどうなんですか?」
「私? 私だったら食べ物なんかなくてもルドガーの胸に飛び込むにゃ」
「……聞いた私が馬鹿でした」
こんな会話が未来で行われていることも知らずに。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ