1部分:第一章
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しかしその人間は違うのじゃ。随分といるそうじゃ」
「随分とか」
忠信はそれを聞いて前足を人間の腕のようにして組みました。そのうえで考えだしたのです。これまたかなり人間臭い格好であります。
「そう、随分とじゃ」
「随分とか。やはり何かあるのか」
「子供がおる」
子供のことは狸のうちの一匹から出ました。
「子供がのう。それでなのじゃ」
「子供がおったら金が余計にいるのか」
「人間の世界ではそうらしいの」
「ふむ、わからんのう」
忠信はさらに考え込むことになりました。人間はどうして子供ができたらお金がもっと必要なのか。それがわからないのでした。
「子供がおったら金が余計に必要なのか、人間は」
「意味がわからんじゃろ」
「うむ」
また仲間達や狸達の言葉に答えます。
「全く以ってな。謎じゃ」
「そうじゃろ。全く筋がわからん」
「何が何なのかな」
狐達も狸達も人間の世の中のこうしたところがどうしてもわからないのでした。人間臭い仕草で人間が食べるのと同じものを食べて人間が飲むお酒を楽しんでいてもです。これだけはどうしてもわからないのでした。幾ら考えても考えてもです。それは彼等が狐と狸だからです。人間ではないのでそうしたところはわかりかねているのです。
「人間はのう。全く」
「わからんな」
「しかしじゃ」
忠信はここで言うのでした。
「面白そうじゃな」
「面白いのは確かじゃな」
「人間もあれはあれで面白いぞ」
狐達と狸達もそれは大いに認めるのでした。
「見ておればな」
「話していてもな」
「そうか」
忠信はそれを聞いてまた考える顔になりました。そのうえでまた言うのです。
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