第二話 『学園生活』
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四月十二日 午後八時三十分
バスルームには、ザーっというシャワーの音が流れていた。初めて高校というものに通った。だいたい想像はしていたが、あまり居心地のいい場所ではなかった。勉強は簡単すぎて退屈だし、シャワールームは付いてないし、そして何より、男子と女子が同じ教室で勉強しているというのが一番信じられなかった。
「私、この任務完遂できないかもしれないなー……」
と、いつになくネガティブな本音を漏らしながら、私はシャワーを止めて、バスタオルを手に外へ出た。送ってもらった段ボールのなかから下着を取り出して、それを着ると、そのままベッドに飛び乗った。
「はぁ……なんで私があんな目に……」
十一時間前
古めかしいチャイムの音がなり、私は、担任の藤沢先生とともに教室へ入った。教室のなかは、かなりざわついた感じに包まれていた。まあ、無理もないだろう。いきなり銀髪の外国人が教室に入ってきて、動揺するなという方が無理な話だ。
私は黒板に、Elena Grace (偽名)を書くと、藤沢が口を開いた。
「え〜、いきなりのことで驚いているとは思うが、今日からこの学校に転校することになった、エレナ・グレイスさんだ」
本当は、護衛のために潜入してるPMC社員だなんて、誰にも言えない。いや、言えるわけがない。確かこの事実を知っているのは、理事長と校長、それから教頭だけだったはずだ。
「それじゃ、自己紹介して」
などといきなり話をふられた。今あんたがしたじゃない、という言葉をグッとこらえ藤沢の言った言葉に補足を加えつつ偽のプロフィールを語った。
「えっと、カリフォルニア州のブライトンフォード国立高校から転校してきました、エレナ・グレイスです。私の呼び方は皆さんにお任せします。しばらくの間、よろしくお願いします」
私がそう紹介すると、教室の中がいっそうざわつき、驚きの声を上げている生徒もいる。なにをそんなに驚いているのだろうと、数秒考えて答えにたどり着いた。恐らく私の日本語が流暢だからだろう。仕事の立場上、16か国を話すことができる。そのなかに日本語も含まれていたから話せるだけのことなのだが、そんなことを知るよしもない生徒たちは……本当にいい顔をしている。きつく結んでいた頬も、自然と和らいでくる。しみじみ平和を感じるのだ。そして想う。自分もこんな、何気ない平凡な日々を過ごしてみたい。死と隣り合わせの世界から抜け出し、普通の日常を送りたいと。
だが、それは無理な話だ。何故なら私は、あまりにも多くの人を殺めすぎたのだから。
そんな思考を切り替えるべく、私は口を開いた。
「えっと、なにか質問はありますか?」
の言葉の直後に繰り広げられた質問の嵐に対応するのは、当然ながら容易なことではなかった。
「
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