第2話 再び出会う
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長谷川は頭を掻いた。少しだけ広がってきたおデコが、最近ちょっと気になってきている。公立校を何度か上位進出させてから、請われて日新にやってきたのが7年前。今から思えば目先の高給に目が眩んで、貴重な公立の正規採用を手放してしまったのは痛恨の極みだ。教師という職の最も良い点は、勤務評価がザルで安定している所だというのに、ハッキリと結果が表れ、しかも安定保証されてない今の立場はその真逆をいくもので、乾いた笑いが出てしまう。
「……だいたい、本気で強化するつもりなら、何で中等部にボーイズでもシニアでも、硬式クラブを部として立ち上げなかったんだか。軟式で全中行ったからって高が知れてんだよ、中学で軟式やってる奴に本当のエリートなんて居ねえんだから。選手の囲い込みも中途半端なら、監督もベスト8程度がやっとの監督だ。どっかズレてんだよなー」
「はいはい、愚痴はその辺にして、さっさとそれ飲み干してください」
「ん、悪い」
自分の半分しか生きてないような女子高生に窘められつつ、コーヒーを啜る長谷川。その顔には既にどこか哀愁が漂っていた。
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「1年生だけでこんだけも居るのかよ。すげえな」
多様な学科を抱える日新学院は、学年だけで5百人を超える。修斗の所属するのは総合進学コース。名前こそ進学だが、それは大学全入時代の産物で、頭の程度はイマイチである。頭が悪くても、子どもを日新にやれるような親の経済力をもってすれば私立大に行ける。そういうことである。修斗は勉強は得意というほどでもなかった。それは野球部員はだいたいそうらしく、同じコースに見知った顔ばかり居て、修斗は驚いたものだった。
初めて一年が全員揃う入学式。校舎の棟さえ違う国際教養コースや特進コースの連中が日焼け一つしていない白い顔をしてる一方、修斗は浅黒い顔を目立たせてそこに割り込んでいった。全ては、彼女を見つける為だ。
「キミ!そこのキミだ、こっち向いて!……はい違う、次!」
……人を探すにしては、随分強引なやり方をとっているが、修斗は御構いなしに突き進んでいった。愛があれば何しても構わないのだ。そういうものだ。
「ああもう、お前も違うよ、ほら次!」
無理矢理顔を確認されて、理不尽に悪態をつかれて去っていかれる女の子達は皆一様に怪訝そうな顔をしているがそんな事もどうでもいい。修斗はリビドーの赴くままに彼女を探した。
そんな手当たり次第な節操のない方法なので、いずれ見つかる。
あの夏に見た、彼女。ショートカットの髪をなびかせて、修斗の方を振り返る。
「あ……」
あの夏の準々決勝から、この瞬間を待ちわびていた。用
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