第2話 再び出会う
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強打の水戸川に全中出場のエース西園寺、粒は揃っておりますな。しかし、1年生というのは?中等部は市大会で久しぶりに負けましたが……」
首を傾げる理事長に、長谷川監督は説明した。
「西園寺を中心に全中出場したそのメンバーの中に、今の一年生が多かったのです。ショートの岩崎、キャッチャーの佐田、サードの脇本、いずれ劣らぬ素質の持ち主です。2年生より粒が揃っているくらいです。一昨年中学野球を席巻したメンバーに水戸川を加えて戦えるのですから、秋以降が楽しみ、だと言うのです」
「おお!」
長谷川の説明に、理事長も食いついた。身を乗り出して、期待に目を輝かせる。
「それでは、ここ数年で我が日新学院野球部の黄金期がやってくるというわけですな!いや〜楽しみだ、初出場の折には盛大に乾杯しましょう。それでは、頼みますよ長谷川監督。私はこれで失礼します」
「は、ありがとうございます。今後とも、ご支援のほどよろしくお願い致します」
満足気な顔で監督室を立ち去る理事長の後ろ姿を、長谷川はお辞儀で見送った。理事長と入れ替わりに未来が部屋に入ってきて、理事長に出したコーヒーを片付ける。黙々と動く未来のその背中に、椅子に深く腰掛けながら長谷川が声をかける。
「おーい未来ー、俺にもコーヒー淹れてよぉー」
「はいはい、ミルクたっぷり、シロップありですねー」
未来が少しだけダルそうにしながらテキパキと淹れたインスタントコーヒーを、長谷川監督は首をポキポキ鳴らしながら啜った。洗い物を目の前で増やされ、飲み終わるのを待たねばならない未来としては良い迷惑である。
「……そんなにこの春から入ってくる1年生は良いんですか?」
「ん?何お前、聞いてたの?」
「たまたま聞こえてきましたので」
長谷川はため息をついた。
「……別に。悪くはないが、この大都市山吹の他校を圧倒するような力まではない。それは西園寺とか2年や、内田とか3年も同じだよ。でもまあ、ああ言っときゃ、あの人もウキウキになってくれるから言っただけだ。それに……」
「秋以降に期待できると言っておけば、監督としての任期延長も期待できますか?」
「ピンポーン!当たりー!」
いい年してはしゃぐ長谷川を、未来は白い目で見ている。その視線に一瞬でテンションを下げた長谷川は、またコーヒーを口先で啜った。
「……お前、勘良い方か?よく分かってるじゃねえか、大人の事情」
「……別に。去年も春頃、同じような事理事長に言ってたの、思い出しただけですよ。勝負は来年、これも去年言ってましたね。先輩方から聞いた話では今年は3年連続3回目の勝負の年らしいですが」
「うわー、刺さる事言ってくれるわー子どもは残酷だなー特にJKって人種はよー」
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