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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月一日・夜:『黒夜』
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「悪いンですが、分かりませんねェ……私には、“家族”とやらは居ないもんでェ」
「居ないから分からない、なンて餓鬼にでも言えンだろォ? 知る知らない関係なく、大人なら類推して想像するもんだぜェ?」


 そんな、当たり前の事を口にして。最愛の怒りを、真正面から受け流して。嚆矢は、巫山戯た様子を吹き消して言い募る。
 まさに一触即発、命懸けのやり取りだ。互いに挑発し合い、先手を引き出そうとする二人のやり取りは。


「………………えっと、あれ、何かすごい真面目な雰囲気な訳だけど。口を挟んだが最後、『正体非在(ザーバウォッカ)』か『窒素装甲(オフェンスアーマー)』を打ち込まれそうな訳なんだけど」
呵呵(かっか)、真面目な場面じゃからな。暇なのはわかるが今はお(あい)順番(たーん)じゃ、少し黙っておれよ、おフレ」
「『おフレ』って、織田……あれ、アンタ何時から?」
「何を言うておる? ()()()()()()であろうに」
「う〜ん、そうだったっけ……いや、そんな気もするような……?」


 いきなり背後に顕現した市媛に、しかしその妖魅により誤魔化されて納得してしまったフレンダ。彼女は近くの自販機の灯りに照らされ、それを眺めて。
 それを無視し、最愛は嚆矢を睨み付けたままで。値踏みするように、彼に向けて。


「なら、答えやがれ……テメェ。その理由は、私の大事なものを踏み躙る理由になンのか?」
(いや)、なろう筈もねェ。他人の人生に、他人の人生は無縁だ」
「そう言う事だろォが、クソッタレが……!」
「あァ、そう言う事だなァ。()()()()


 端からは、全く意味が分からないだろう。だが、分かるモノもある。それは、見逃せないレベルの『共感覚』であった。


──理解できる。嗚呼、それは、確かに。俺も感じた事のある、その感情だ。


「最愛ちゃんは、そうか……()()()()()
「………………………………」
「分かるぜ、その気持ち。俺もそうだからな」
「────巫山戯ンじゃねェ、テメェ如きに何が分かるってンだ!」


──俺が、“()()()”に感じたそのままを……彼女は、『アイテム』に感じているんだろう。
 それを誰に、否定できるのか。少なくとも、俺には出来ない。出来ないし、()()()()()()()()()()()()()()()()()それを赦しはしない。
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