第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月一日・夜:『黒夜』
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る公園。昼間はウニ頭の高校生が自販機に金を飲み込まれて喚いたり、ビリビリする中学生がその自販機を後ろ回し蹴りしていたりするような、何処にでもある緑化公園だ。
蒸し暑い夏の暗闇の中、気の早い虫達は既に熾烈な伴侶獲得の為の歌謡祭を催している。無論、虫に限った話ではないが。
青春を謳歌する学生が逢瀬をしたり、それを邪魔する落第生が屯していたり。昼間とは真逆の表にはでない騒がしさが、満ち潮のように溢れている。
「で、結局アンタの名前は?」
「はいよ、フレンダちゃん。俺は対馬 嚆矢、弐天巌流学園三年で合気道部所属。絶賛、彼女募集中」
「最後の情報はどォでもいィとして、弐天巌流……あの、『武の巓』の?」
「一番重要なトコなのに……そ。その弐天巌流でオーケー。まぁ、時代錯誤の三流学園さ」
そんな中を、何でもなさげに三人は歩いている。女子二人にギャルソン、どんな組み合わせかと注目を浴びそうなものだが……自分達の世界に浸るのに忙しいのだろう。誰も気になどしていないようだ。
その証拠に、今もほら。押し隠した熱い息吹が、其処彼処から。絡み合う吐息とぶつかり合う肉の音が、茂みや物陰から恥ずかしげもなく木霊して。
「ふ〜ん」
「……何か?」
「いえいえ、何で覆面なんてしてるのかなって気になっただけな訳よ。別に隠すような顔じゃないってのに」
空色の瞳で上目遣いに、二歩先を後ろ歩きで行くフレンダから覗き見られる。ハニーブロンドの長い髪が、更々と夜風に流れる。居心地の悪さに口を開けば、返ったのはそんな言葉。
本当に、黙っていれば仏蘭西人形のように可愛らしいだろうに。
「何か────隠さないといけない理由でもあるんですかねェ。例えば、『表』の顔に?」
そして矢張、黙っていれば市松人形のように可愛らしいだろうに。怒りを滲ませた無表情でフードの奥から覗き見る、その瞳。
「無いって、最愛ちゃん? 俺はただ、アレ……家族に迷惑が掛かるのが嫌だっただけさ」
「“家族”ぅ? そんなもん、何を気にする必要なんて────」
「………………なるほどォ」
そう、僅かに欺瞞を。そして多分に本心も含めた、予め用意していた理由を口にして。
フレンダは怪訝な、最愛は────そんなフレンダすら黙らされる程に、更に眼光を強めて。
「要するに、自分の為に私らを欺いたって事ですか?」
「そうとも言えるかも知れねぇけどさ。俺としては、今は家族や
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