第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月一日・夜:『黒夜』
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
此方を見遣る。それは底冷えがする程に、嗜虐的な瞳だった。それは底冷えがする程に、無慈悲な瞳だった。
それを暗澹たる瞳で見遣る。陰惨な蜂蜜色の黄金瞳で、遠く空の彼方の三日月と朧な星影を浴びながら決意を固める。
──ヤるしかねェな……幸いと言うか何と言うか、彼女らは麦野沈利達には俺の事は報せてない。それは、“剱冑”の『音響探査』で把握した。
同僚の初春飾利に、下級生蘇峰 古都にそうしたように『空白』のルーンを刻んで記憶を消す。それしか、手は残されてねェ。
漸く自由になった右手で『兎脚の護符』から、頭痛と共に『空白』のルーンを励起する。闇に煌めく無色の励起光を、誰も見る事は出来ない。後はなんとか、触れる事が出来さえすれば。
「──良い眼ェすンじゃねェですか、まるで餓狼ですねェ」
「結局、私らに何かあれば送信予約してあるメールが麦野に届く訳よ。下手な事はしない方が良いのよね」
「………………チッ」
だが、このルーンは『空白』。他の文字とは併用が出来ない。自然、『話術』や『博奕』の消えた状態となり、暗部として経験を積んでいる彼女達にそれを見咎められてしまう。舌打つも、もう取り返しはつかない。
それでなくとも『正体非在』等と言う能力を騙り、詳細を明かしていないのだから警戒はされていたのだろうが。
『空白』のルーンを終息させて、代わりに『話術』のルーンを励起して。
何にせよ、これで四面楚歌だ。後は鬼が出るか蛇が出るか、なるようにしかなるまい。
「それじゃ、とりま散歩でもする訳よ」
「わ〜い、全男子の夢『両手に花』だァ。美少女二人に挟まれてうーれしーいなー」
「………………」
嘲笑うフレンダに促され、自然体である沈思黙考から軽佻浮薄に。巫山戯つつ店外に向かう。無論、背後は殺意を隠しもしない最愛に固められていて逃げ場はない。
師父には告げない。告げなくても、理解しているだろう。それでも手や口を出してこないのは、信頼からか諦観からか。何にせよ、一人でやるしかないのは確か。
そんな、夜の闇の底で。まるで、処刑の為に市中を引き回される罪人のように。
無貌の夜鬼がせせら笑うかのような風力発電塔の軋む音を、遠く聞きながら。
………………
…………
……
時刻、二十一時四十五分。場所、第七学区のとあ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ