第25.5話 憎しみの記憶
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ゃるのですか?と訊いた。
「だって、誰一人として壁際で微動だにしていないんですよ?
しつけが良く行き届いていますね」
今の言葉から、彼らにとっては使用人でさえ
同じ人間としての価値を持っていないようである。
「ところで、食事は始めないのですか?」
小太りの男が大広間の一番前にある
全員の視線が注目しやすい位置に座る屋敷の主に声をかけた。
しかし、彼からの返事はなかった。
「早くしないと、せっかくの料理が冷めてしまいますぞ」
その点に関しては大丈夫である。
とうの昔に冷めきっているのだから。
「‥‥‥‥‥‥そろそろ潮時ですね」
私は屋敷の主の前に立ち、こう言い放った。
大広間にいる全員は一斉に私に視線を向けた。
「‥‥‥それはどういう意味です?」
鼻の高い、金髪の偉そうな男が私に訊いてきた。
私は、屋敷の主の後ろに立った。
「誰も疑問に思わないのですか?
屋敷の“壁側”にいる者たち全員が誰一人として
“瞬きすらしていない”ということに」
それを聞いて、全員が騒然とした。
彼らはこの世界は自分が中心だと思っている。
故にここで誰かが人形に変わっていたとしても気付かない。
「そして、ここに座している主の正体は‥‥‥‥‥」
私の次の動作に全員は驚愕した。
屋敷の主の首が、音もなく外れたのである。
その衝撃に全員が立ち上がり、その衝撃で
屋敷にかけられた私の魔法は解けた。
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタッ!!
次々と周りに居た使用人が音を立てて崩れ落ちた。
その全員の首も、体と独立して床に落下した。
よく見れば、首は人形の頭であった。
しかし、身体は確かに人だった。
「き、きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああッ!!!」
「し、死んでる!それも全員!!」
「ワシらは亡霊の食事会に付き合わされたのか!?」
「いやああぁぁぁぁぁぁあッ!ワタシ死にたくない!!」
今まで貴様らの茶番に付き合って
何人の奴隷たちが死んだだろう。
弱者の気持ちは強者には分からない。
貴様らも知れ。
命を奪われて、知れ。
「ひいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいッ!!」
ガタッ! ゴトンッ
一人の女性が恐怖のあまり、机の上の料理に手が当たり
銀色のドーム状の蓋がカーペットの敷かれた床に
そのまま落ちて、鈍い音を立てた。
そして、その中の料理が女性の前に露わになった。
「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」
女性の悲鳴と中の料理の正体に驚き
後ろに退いた拍子にテーブルに身体が当たって
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