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鎧虫戦記-バグレイダース-
第25.5話 憎しみの記憶
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呼ばずして、何と呼ぶべきだろうか。



    **********



一か月の地下牢生活の後、彼は再び上に戻された。

「次からはあまり出しゃばるなよ!」

そう少年から言われた。出しゃばるとは何だろう?
撃てと言われて、頭を撃ち抜く事がそうなのだろうか?
ならば、もう出しゃばらないようにしよう。私はそう決めた。

3日後、別の少年から銃で撃てと言われたので
それを拒否したら、また父親から拷問され、地下牢に繋がれた。



    **********



暗い。またここだ。私はそう思った。
私の中では、もうここは飽ききった場所だった。

『鎖さえなければ、静かで良い所なのだが‥‥‥‥』

私は鎖の両端を掴んで、軽く引っ張ってみた。
何も見えないので確認できない。しかし、確かに分かる。


外れた。


片手は確かに不自由なく動かせている。
私はもう片方の鎖も軽く引っ張ってみた。


やはり外れた。


これで、両腕が自由になった。
金属の輪が両の手首に付いていたので
留金の金具を回し抜いて、それも外した。

地下牢の鎖は錆びついていたので
こんなにも簡単に千切れたのだろうか。

私は壁から垂れて石畳にまで伸びている鎖を両手で拾い上げた。
まだ、ジャラジャラと音がするのでうるさく感じた。

鎖は金属の輪を沢山連ねた物だ。逆に言えば
バラバラにすれば、ただの金属の輪に過ぎない。

私は鎖の輪を一つ掴み、左右に引っ張った。
感触はなかったが、千切れていた。

それを、ただひたすら繰り返した。

たまに落とした時はギャリンと耳に痛い音が鳴るので
それを注意するようにしながら続けた。

太陽も月も見えないので、一体何日経ったのかは分からないが
2本の鎖は数十個の小さな金属の輪になった。
暗くて何一つ見えなかったが、この作業は正直楽しかった。
しかし、それも終わってしまった。

金属の輪をまた鎖に戻そうかと考えたが、うるさいのでやめた。



    **********



私は、数週間後に三度上に戻された。

そして、今に至るのだ。外で荷物を運ぶ仕事をしている。
最初は痛かった鞭が、今では叩かれたという程度にしか感じない。
私の中で、痛みとはとっくに重要なものではなくなっていた。

「さっさと働けと言っているだろうクズがッ!!」
 
 バチィンッ!

「ギャアッ!」

別の誰かが叩かれた。まともな食事も与えられずに
まともな仕事ができるのだろうか?
いつもたらふく物を食らうだけの愚者(クズ)
ろくに物も食べれず、それでも働く奴隷(クズ)
どうこう言えるのだろう
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