第25.5話 憎しみの記憶
[4/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
呼ばずして、何と呼ぶべきだろうか。
**********
一か月の地下牢生活の後、彼は再び上に戻された。
「次からはあまり出しゃばるなよ!」
そう少年から言われた。出しゃばるとは何だろう?
撃てと言われて、頭を撃ち抜く事がそうなのだろうか?
ならば、もう出しゃばらないようにしよう。私はそう決めた。
3日後、別の少年から銃で撃てと言われたので
それを拒否したら、また父親から拷問され、地下牢に繋がれた。
**********
暗い。またここだ。私はそう思った。
私の中では、もうここは飽ききった場所だった。
『鎖さえなければ、静かで良い所なのだが‥‥‥‥』
私は鎖の両端を掴んで、軽く引っ張ってみた。
何も見えないので確認できない。しかし、確かに分かる。
外れた。
片手は確かに不自由なく動かせている。
私はもう片方の鎖も軽く引っ張ってみた。
やはり外れた。
これで、両腕が自由になった。
金属の輪が両の手首に付いていたので
留金の金具を回し抜いて、それも外した。
地下牢の鎖は錆びついていたので
こんなにも簡単に千切れたのだろうか。
私は壁から垂れて石畳にまで伸びている鎖を両手で拾い上げた。
まだ、ジャラジャラと音がするのでうるさく感じた。
鎖は金属の輪を沢山連ねた物だ。逆に言えば
バラバラにすれば、ただの金属の輪に過ぎない。
私は鎖の輪を一つ掴み、左右に引っ張った。
感触はなかったが、千切れていた。
それを、ただひたすら繰り返した。
たまに落とした時はギャリンと耳に痛い音が鳴るので
それを注意するようにしながら続けた。
太陽も月も見えないので、一体何日経ったのかは分からないが
2本の鎖は数十個の小さな金属の輪になった。
暗くて何一つ見えなかったが、この作業は正直楽しかった。
しかし、それも終わってしまった。
金属の輪をまた鎖に戻そうかと考えたが、うるさいのでやめた。
**********
私は、数週間後に三度上に戻された。
そして、今に至るのだ。外で荷物を運ぶ仕事をしている。
最初は痛かった鞭が、今では叩かれたという程度にしか感じない。
私の中で、痛みとはとっくに重要なものではなくなっていた。
「さっさと働けと言っているだろうクズがッ!!」
バチィンッ!
「ギャアッ!」
別の誰かが叩かれた。まともな食事も与えられずに
まともな仕事ができるのだろうか?
いつもたらふく物を食らうだけの愚者が
ろくに物も食べれず、それでも働く奴隷を
どうこう言えるのだろう
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ