第25.5話 憎しみの記憶
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立たない武器。
「‥‥‥‥‥‥‥分かりました」
そう答え、こめかみに当て、硬い引き金を引いた。
ガキンッ! ドンッ!
弾丸がはじき出され、頭蓋骨を叩き割り、柔らかい脳を貫き
反対の頭蓋骨を抜けて、部屋の壁に突き刺さった。
キンッ
「‥‥‥‥‥‥‥撃ちました」
薬莢が地面に落ちると同時に
私はこう言いながら、銃を少年に返した。
「‥‥‥‥うおぇ‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
少年は片手で口を押さえて、そのまま走り去っていった。
メキメキ‥‥‥ッ‥‥‥
両方の側頭部に開いた穴は
周りから肉が寄っていき、完全に塞がった。
私の前には空虚だけが残った。
生とは死へと向かう間にヒトが感じるモノだ。
では、私にはそれがあるのだろうか?
魂から溢れ出る命が、私に死を許さなかった。
**********
「ハァ、ハァ、このくらいで反省しておけッ!!」
ガキンッ!
暗い、唯々暗い、地下の牢獄に閉じ込められた。
少年が「――――が俺の気分を害した」と父親にチクったらしい。
そして、この家の主である少年の父親が私を鞭打ちを始めとする
様々な拷問で責めたてたのである。
今、私は鎖で壁に繋がれている。
ジャラジャラと耳に残る金属音が動く度に鳴り続けた。
『‥‥‥‥‥‥‥‥‥生とは』
生きているとは何だろう。
彼は心の中でそう問いかけた。
もちろん、答えが返るはずがない。
しかし、問わずにはいられなった。
私のように、奴隷ゆえに蔑まれながら生きていく事が生なのか。
少年やその父親のように、弱者を蔑みながら生きていく事が生なのか。
『‥‥‥‥‥無駄だな‥‥‥‥‥』
考えるだけ無駄だった。現在を生きる事。
それが生であるということにしておこう。
それより、先程の価値についてだが
それが今はわからなくなっている。
生きるために役立つ様々な事、いわば技術を高貴な者達は使えなかった。
この前、屋敷にいる人たちに食事の用意、洗濯、掃除などが出来るかを訊くと
「使用人たちがすることを、何故私たちがしなければいけないの?」
と、男女で言い方に差があっても大体同じような事を答えた。
そして、無礼者と私をぶったのだ。
この家の貴族たちに蔑まれている奴隷たちに同じことを訊いてみると
「僕は料理が苦手かな」「私は力仕事が出来ないわ」「俺は皿洗いだな」
など、習っていない技術や初めて知ったもの以外は
生きるために必要なものだと言って、覚えている者がほとんどだった。
何の能力も持たない役立たずの高貴な者達が
それぞれ個性ある才覚を持つ奴隷たちをけなしている。
これを暴挙と
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