第25.5話 憎しみの記憶
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行き
何食わぬ顔で反対側から出てくる芸。
投げナイフの的になって、飛んで来るナイフを受け
額に当たった瞬間に倒れ込み、「死んだ」と思わせておいて
勢いよく立ち上がり、大丈夫だとアピールするという芸。
箱の中に入って無数の剣で刺され、それを抜き
また何食わぬ顔で現れるという芸。
上半身と下半身の二つに分断されて
それぞれが血を噴き出しながら歩いていき
ある程度歩いたら、再び一つになるという芸。
(ここ辺りから倒れる人が現れ始める)
トランポリンで空中に大ジャンプして、勢いよく地面に激突し
全身をバラバラにし、血だまりの上に黒いカーテンを掛けて
再び上げると、身体が元に戻っているという芸。
芸の中で最も反響を呼んだのは、天井近くに吊るされた小部屋に入り
吊り天井が落ちて来て、血が観客に雨のごとく降り注ぎ
全員が「これは完全に死んだな」と思わせながら吊り天井を上げると
平然と部屋から出て来るというものである。
肉体の再生力が上がったから出来たことである。
小部屋の近くにはその部屋に入る為のロープしかなく
それも芸が始まる時には回収されるので、一体どうやって
あの芸を成功させているのかが誰にもわからなった。
たとえプロのマジシャンでも分かるはずがない。
この芸にはタネは全くないのだから。
経営は絶頂期を迎えて、やや山が下り始めた後
『血塗れ曲芸団』閉幕会を最後に終了した。
一団体から億万長者に成り果てたサーカス団は
彼を再び奴隷市場に売り払った。
値段は二束三文、すなわち、はした金だ。
所詮、こんなものだ。ヒトの価値とはこんなものである。
**********
そして、私は貴族の家に買われることになった。
「やぁ、お前が新しい奴隷か?」
高貴な服に身を包んだ少年が話しかけてきた。
高い鼻で髪にロールがかかっていた。
ヨーロッパの貴族を想像すれば早いだろう。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥はい」
私はうなずいた。少年は手に鞭を持っていた。
あぁ、またこれか。私は心の中でそうつぶやいた。
バチンッ! バシッ! ビシッ!
少年は私の身体を鞭で叩き続けた。
叩く度に肉が裂け、血が弾け飛び、壁に散った。
別の個所を叩く間に叩かれた傷はほとんど塞がっていた。
「うえぇ、ホントに治ってる。化け物だな」
私自身でも限りが分かっていない不死の能力。
いつか死ぬのか?ここで叩かれ続けていればいつか。
しかし、そのいつかは来ない。
「これで頭撃ってみろよ」
少年は腰から見かけに似合わない黒い鉄の塊を取り出した。
拳銃だ。何回も見たことがある、何の役にも
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