第25.5話 憎しみの記憶
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生きるって‥‥‥‥‥‥‥‥何だろう。
物心ついた時にふと思ったことである。
「オイッ、何やっているノロマ!」
ベチィンッ!!
私の売られた時の値段の何十倍も高い衣服に身を包んだ男が
鞭で背中を強く叩いてきた。痛々しい線が背中に走った。
皮膚がパックリと割れて、鮮血が流れ出した。
しかし、動きを止めてはいけない。
無駄に叩かれて体力を浪費するだけだからだ。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
私は無言のまま仕事を続けた。
「ダラダラしてると飯抜きにするぞッ!!」
バシィンッ!!
地面を鞭で叩きながら男は叫んだ。
全てのモノには価値がある。
それは人間も例外ではない。
親友とただの友達とでは価値が全く異なるように
ヒトは価値を基準にして動作を行う。
無駄な事を行うことの愚かさを
考えれば当然の事だろう。
価値のないことをすることは
文字通り価値がないことだからだ。
この世の中ではヒトがヒトを売っている。
いわゆる奴隷というモノだ。
貴族が下等な人間、つまり奴隷を
自らの鬱憤を晴らすため、楽しむため
苦しむ姿を見て、自らの地位を改めて知るため
などの様々な″使い方″をされている。
彼らはヒトをヒトとして見ない。
生まれつき、傷の治りは早い方だった。
先のような大怪我も数十分あれば完全に塞がる。
前には腕を切られたこともあり、「くっつけてれば治る」と
笑いながらろくな治療も行われなかったが
くっつけたままいたら、数時間で治った。
得に変わり映えのない日常に最近、新しい変化が起こった。
自分が死なないことが分かったのだ。
全身を切り刻まれても、電気を流されても、
水の中に数日沈められても、火の中に放り込まれても
目をえぐり出され、舌や指や耳をねじ切られ、手足をもがれ
内臓を順番に取り出されても、死ななかった。
最近は、粘土のように肉が再生するようになった。
目覚めた力を使ってサーカスに出ることになった。
トラの入った檻の中に入って、ズタズタにされて、中身を引きずり出され
観客が「もうすでに死んだだろう」と誰もが思うタイミングで現れる。
その瞬間、会場は大歓声に包まれるのだ。
あそこに落ちた首やそこの右足は、精巧に作られた人形で
トラが咀嚼している内臓は、ウシかブタの内臓で
檻の中に四散している血は、ペンキか何か。
そう観客たちは自らに言い聞かせ、納得するのだ。
それが有名になり、少しずつサーカスは大きくなっていった。
『血塗れ曲芸団』の開幕であった。
それに伴い、芸も一個ずつ増えて行った。
燃えさかる炎をゆっくりと歩いて
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