3話 「身の程を弁えるべし」
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アと仲間たちは、病室内で結果報告を聞いていた。
セリアはベッドの上に寝かされて、他のメンバーは椅子に座った状態で静かに声に耳を傾けている。
命の恩人となったブラッドリーは、興味なさ気に腕を組みながら言った。
「俺はお前らのやる気がまだ続いているなら、マーセナリー入りを認めてやってもいいぞ?」
ぞんざいな言い方だった。
だが、その言葉に意気揚々と返事をするものは誰もいない。言葉に込められた痛烈な皮肉に怒るものもまた、誰もいなかった。
誰もがリメインズと言う異常な場所を舐めていた。リメインズ内の魔物があれほど苛烈な存在だとは思っていなかった。今日、ブラッドリーがいなければこの冒険ギルドは間違いなく全滅していただろう。
セリアの脚は一応ながら完治の目途が立った。
エルフェムの民は術の効果を増大させる体質がある為、治癒術による治療を続ければ完治には1週間もかからない。明日には松葉杖で歩き回り、3日後にはほぼ完治するだろう。他の面々は疲労こそあれ大した怪我は負っていない。
だが、だからリベンジしようとは誰も言わない。
皆が皆、唇を噛んで項垂れている。
沈痛な面持ちを見渡したブラッドリーはふん、と鼻を鳴らしてメンフィス確認とをる。
「……その沈黙を答えと取っていいな?」
「………はい。俺達は認識が甘かった。そして未熟だった。今のままマーセナリーになっても生きていけないと言う事がよく分かりました」
「……………っ」
リーダーの一言を止める者もまた、いなかった。
取り返しのつかない事態を招きかねない提案をしたのだ。それに全員が気軽に乗ってしまった。その報いこそがその戦意の喪失と、セリアの足だ。痛いほどに自分たちの未熟さが身に染みていた。
それを一瞥したブラッドリーは小さな声で「それでいい」と呟いた。
「セリアの治療が終了するまでは、お前らにこの町の滞在許可が下りている。今のうちに装備を整え、疲れを取り、そして冒険ギルドに戻るなりなんなり好きにしろ」
色あせた金髪を微かになびかせて、ブラッドリーはゆっくりと病室を後にする。
その背中には、返り血と傷に塗れた鞘が静かに揺れていた。長く長くあの過酷な世界に潜り、戦いを続けていたことを証明するように。
ただ、セリアは。
(悔しいよ……ブラッドリーさんに助けてもらったのに、彼は私たちに何一つ期待もしていない……私たちは、ううん、私って……その程度の戦士なの?)
静かにベッドのシーツを握りしめ、歯を噛み締める。
彼に恩返しどころか、今の自分では礼を言う資格さえもないような、そんな気分にされた。
蚊帳の外。負け犬。井の中の蛙。そのまま終わっておめおめ逃げ帰っていいのか?
皆はもう諦めているのが分かる
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