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リメインズ -Remains-
3話 「身の程を弁えるべし」
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それを真正面から受け止め、その上でお前の鮮血をこの地にブチ撒けて死んでくれ。

「来いよデカブツ。まさかその図体で怯えてるのか?」
「グオォォォォォォォォオオオオオオッ!!!」

 瞬間、その不遜な一言に激怒したかのようにオーガベアが跳躍した。
 速い。全身の筋力をばねに、弾かれるように加速したその速度は、まるで巨大な弾丸のようだ。
 あいつそのものが一発の弾丸にして斬撃、お前を殺してやる――その殺意そのものだった。

 だがオーガベアはその爪を伸ばして獲物を殺めんとした瞬間に、自分が一つの勘違いをしていたことを知る。

 自分の殺気を超える覇気。
 次の瞬間に自分の命が削ぎ落されるという確信――一種の死期を理解した。

 熊の目が怯える。俺の口角が吊り上る。
 爪が俺に振れるよりも一瞬速く、俺は正面に踏み込む。
 足の裏を通して体を突き抜けた衝撃を全て段平剣の切先に注ぐように溜め、静かに告げる。

「獲物はお前なんだよ。忙しいから、今日は一撃だ」

 一閃。

 オーガベアは、その爪ごと全身を横一線に切り裂かれ、鮮血がリメインズの草木を彩った。
 敵を斬った瞬間に手に残る衝撃だけが、空虚な心を埋めてくれる。そんな気がした。

 身体の上と下が別れを告げたオーガベアは、突進の勢いのまま地面に転がって死んだ。
 剣の血を軽く振って払う。尾を引いた粘性の高い魔物の血液が飛び、その飛沫が俺にセリアを助けるように言ったメンフィスの顔に引っかかった。自分の顔にかかったそれが魔物の血であることに気付いたメンフィスは、血が飛んできた先の真っ赤に染まった俺を見て悲鳴を上げた。

「ひ、ひゃぁぁぁあぁああああ!?」
「……呆れた奴だ。返り血ぐらいで何を騒ぐ?それとも今まで血を見たことがないなどと抜かさないだろうな?」

 返り血を全身に滴らせながら、足をやられたセリアの事も忘れて腰を抜かす馬鹿どもの方を振り返って心底呆れた。このギルドのリーダー格だと聞いていたが、これでよく今までリーダーが務まったものだ。
 全身が血に塗れた剣士など、このリメインズでは誰もが見慣れている。この程度で取り乱すのでは近い将来チームを全滅させるだろう。

 だいたい、見たのが同族の死体でないだけ有り難く思ってほしいくらいだ。

 魔物の血が滴る剣を大地に力いっぱい突き刺す。大地を伝わった衝撃と轟音に、全員が立ち止まってこちらを見たのを確認し、こう告げる。

「ここはリメインズだと言った筈だぞ?ここは奈落であり、全てを失う場所であり、冒険者の墓場だ。あと少しでお仲間もそこに加わるところだった。そのことを本当に理解していたのか?していなかったのなら――マーセナリーなど諦めろ。邪魔だ」



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 セリ
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