3話 「身の程を弁えるべし」
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双眸に俺を捉えた。
「グルルル……グオァァァァアアアアア!!!」
「キャッ……!!」
咥えていたセリアを捨てて、オーガベアは身を低く屈めながら咆哮する。
地面ごとビリビリと揺るがす遠吠えに、今度こそギルドの連中は気圧された。
オーガベアはこのエリアの生態系の頂点だ。雑食で何でも食べるので、植物系の魔物さえ喰らうこともある。他の魔物は巻き添えを喰らうまいとこの一帯から逃げ出しているだろう。
つまり、今だけは逆に周囲を警戒する必要がないということだ。お守りが楽になった、と皮肉気に笑う。
「うわぁぁぁぁッ!?ば、化物……!!」
「何で俺達が来る時に限ってこんな……もう嫌だぁ!」
後ろにいたセリアの仲間たちは口々に弱音を吐いて戦意を喪失してゆく。腰抜けどもめ、と内心で侮蔑する。オーガベアなどリメインズ内ではせいぜいが下の上程度の強さ。そんな魔物相手にこの有様ではマーセナリーとして落第もいいところだ。
――これだから素人をリメインズに入れるなど反対だったのだ。
耳障りな唸り声を空ける目の前の怪物。
身をかがめるのは、オーガベアが必殺の一撃を放つときのモーションだ。
その巨大な図体に溜めこんだ筋力を弾けるように解き放ち、凄まじい加速を乗せた爪で相手を粉砕する。まともに喰らえば重装兵でも吹き飛ばされるだろう。
なら、まともに喰らわなければいいだけの事だ。
挑発するようにオーガベアの目の前に立ち、大仰に剣を構える。既に臨戦態勢に入っているオーガベアは敵意と牙を剥き出しに、その四肢を深く曲げた。
オーガベア相手に正面から戦うなどギルドメンバーからすれば正気の沙汰ではない。束になっても勝てない相手だからだ。無論、それは俺には当てはまらない。
「ブラッドリー!?何をやってる!?逃げろ、そいつは化物だ!!」
「そ、そうよ!セリア一人のために全滅する訳には……」
「……黙ってろ木偶の棒共めッ!!」
「ヒッ!?」
怒声一喝。
オーガベアの声にも劣らない大音量が他の連中を黙らせた。
余りにも浅慮なこいつらに対する苛立ちを爆発させてしまった。少々大人げなかったか?とも思うが、今回のこれは実力も覚悟も足りずにマーセナリーになろうとしたこいつらにはいい教訓になる筈だ。
何はともあれ、これで漸く目の前だけに集中できる。
交差する視線。吐き出す息が、熱い。
心臓は高鳴りながらも、集中力だけはどこまでも延長される感覚。
ああ、この感覚だけはいつ味わってもいいものだ。
不謹慎ながら、血を流して必死にオーガベアの下から逃れようと這いずるセリアのことを忘れてこの瞬間の高揚を楽しんだ。
さあ、俺を楽しませろ。
本能の赴くまま、狂ったように暴れ狂え。
俺は
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