3話 「身の程を弁えるべし」
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最後の最後で面倒事を――と、俺は苛立たしげに舌打ちする。
見れば大型魔物のオーガベアが弓兵の女性、セリアに襲いかかっている。
今日のメンバーの中では一番見込みがあると思っていたが、買い被りだったかと少し落胆した。弓兵が敵の接近を許すのでは話にならない。
「ブラッドリーさん!!セリアがやられた!た、助けてくれぇ!!」
目の前の魔物を斬り殺した俺に、後ろからメンフィスという青年が情けなく縋る。
どことなく植物系の魔物ではない獣独特の臭いがしたが、オーガベアの奇襲ならばなるほど、こいつらの技量では手に余る。
セリアは既に捕えられ、片脚をオーガベアに噛みつかれて苦悶の表情を浮かべていた。オーガベアは男は殺すが女は食べる習性がある。まだ牙が骨を砕いたり肉を抉り取る段階には至っていないようだが、どちらにしろこのままでは彼女に待っているのは死だ。
逆さ吊りになった彼女の身体に、オーガベアの口から垂れた自分の血液が降り注ぐ。自分の命の源が音を立てて滴り落ちる様に、セリアは半狂乱で泣き叫んでいる。誰かが助けてくれることを信じて。
しかし、現実はそうもいかないらしい。
「イヤァァァァァァァッ!?誰か、誰かぁぁ……あ゛あ゛ぁぁぁぁッ!?」
「セリアぁッ!」
「くそっ!どうすれば……どうすれば倒せるんだよ!?」
必死の懇願は届いている筈だが、先走るのは言葉ばかりで肝心の刃が届いていない。あの傷の深さではもう膝から下は戻ってこないかもしれないというのに、何をチンタラしているんだ。
周囲は助けようと動いてこそいるものの、そもそもリーチで負けている相手に機能する筈の弓兵が襲われているために前へ出られないようだ。何故後方支援の彼女に接近を許したのかが理解できない。おおかた迫力に気圧された所を突破されたのだろう。
獲物に気が逸れているのだから余った爆竹なり神秘術なり使って怯ませればいいものを。
素人め、と舌打ちする。
オーガベア相手に正面から戦う実力もないのならお前らは何故こんな場所に来たのだ。ピクニックにでも行くつもりだったのか。今すぐに叱咤したい気持ちを抑えながら、段平剣を携えて走る。仕事柄、目の前で死なれても困る。
セリアを盾にするように立っているのが厄介だが、今更この程度で苦戦するほど安い腕ではない。でなければ俺はとっくにリメインズに屍を晒している。
口元からぼたぼたと鮮血を垂れ流しながら敵意を剥き出しにするオーガベアを見据える。
魔物は種類によって人間に対するアクションが違う。オーガベアは戦いの効率より食事を重視する傾向にある。そのため餌を手に入れた状態で敵意を向けられると、獲物を奪いに来たと考え、先に邪魔者を始末しようとする。
オーガベアは俺が飛ばした敵意に気付き、その
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