≪アインクラッド篇≫
第三十三層 ゼンマイを孕んだ魔女
アスナの憂鬱 その壱
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いいかも。今後の攻略でも彼の実力が分かっていれば、作戦も組み立てやすいだろうし……。うん、よしっ!」
アスナは決心した。待ちぼうけの扉が開いたのはメールが送られて十分も経ったあとのことであった。
風側の地にあり最も墓塔に近い拠点であるエニジミという村の酒場の隅で、四人の男女の冒険者が固まって話していた。落ち着いた風体の真紅のローブを包んだ男、長身で高官の軍服のような服を纏った男、ブルーのロングコートを着た藍色の髪の女、髪から靴まで金色の少女。どれもかれも個性的が過ぎていて、逆にその場に馴染んでいるように思えた。
アスナが酒場の扉を開け、その光景を見た時にはやや頭が痛む感じがした。さきほどのメールでメンバーの確認をしたし、承知の上でこの場に来たのは間違いないのだが、いざ対面すると各々の存在の濃さに酔ってしまいそうになる。
「……団長、ただいま参上しました」
「ああ、到着したようだね」
団長がアスナを確認すると、「好きな席に座り給え」と一言だけ言い、軍服の男、スバルと話し出した。このテーブルの一角に座るのを躊躇ったアスナは立ち尽くしたまま、その話を聞いた。
「スバルくん、このようにメンバーはおおよそ五人ほど揃ったわけだが、あと一人のメンバーはどうするつもりだい?」
「そうだな、壁役自体はヒースクリフとインディゴの二人で十分だから、ここで欲しいのはダメージディーラーだな。塔という狭い空間なので攻撃が範囲技のメントレにはサポートに回ってもらい、俺はアサシンをする。アスナにも安定した火力を出してもらうが一人だとやや薄いからね。やはりもう一人ぐらい欲しい」
「成る程、それで候補は居るのかね?」
「……ベストな片手剣プレイヤーは居たが、少々訳ありで連絡が付かない。だが他にも候補はいる」
「ふむ、ならば君に任せよう」
「まぁそっちのメンバーを立たせたい気持ちは分かるが―――― ん? えっマジ?」
「ああ、任せよう」
アスナは団長の全任主義というのを良く分かっていたので、その言葉に然程驚かなかった。団長はギルド活動にしろ攻略にしろアスナや団員に提案をすることがあっても命令だけはしたことがない。それが団長の美徳なのか主義なのかは些かアスナには判別し難いが、そういう指針なのだということで納得している。
だが、それはあくまで≪団長≫の話であって≪アスナ≫は別である。
「団長、私がこの場にいるのにそうすぐに決めて貰ったら困ります」
アスナがそう言うとスバルは、そりゃそうですよね、とでも言いたげな苦々しげな表情をしながら、背もたれに体重を預けインディゴの方をちらりと見た。メントレとトランプをしていた。スバルがアスナに向きなおる。
「そっちからメンバーを立たせたいのは理解できる
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