≪アインクラッド篇≫
第三十三層 ゼンマイを孕んだ魔女
アスナの憂鬱 その壱
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ナにはスバルの根本的な姿勢や性格というのが分からなかった。
集団戦において司令塔をこなし、誰が見ても分かるほどの利を周囲に与え、信頼を獲得しているにも関わらず、何処にも属さずにギルドも作らない。
ならば彼はお人よし、または八方美人なのか? 違う。ありえない。
スバルは時に無情となる。二十五層で軍が失態した時だって、徹底的に執拗に責任を追及し攻略組からの撤退を強制させた。どちらにせよ軍が攻略から手を引く筈だ、とインディゴがスバルを落ち着かせようとしてもスバルは退かずに責任の追及を繰り返していた。怒りからではない。まるでそれがさも当然かのように、悠然と解体を命令したのである。当時、最大規模の勢力の一つでもあった軍は抵抗したが、結局はメンバーの大部分がゲーム的な結束でしかないギルドだったのであっさりと敗北した。軍は現在も二十五層の負債を抱えている。全盛期の半分程度の勢力になってしまった現在でも未だ人材が減り続けているらしい。ここまで容赦の無い彼が八方美人なら≪狂戦士≫アスナだって八方美人だ。
ならば彼は真面目なのか? 攻略に関して真剣に取り組んでいるのか? 違う。ほど遠い。
アスナはレイド戦の作戦を組んでいる時、常に彼の武器に疑問を持つ。あまりにも非効率的で長所の少ない型。癖が強く作戦段階ですら扱いきれない難解な剣。それをまるで我が子のように愛するスバルを異常に思えない日はなかった。ソロ向きともパーティー向きともいえない半端なビルドでいて、しかし与えられた役割は司令塔であろうと戦闘員であろうと十全にこなす。
ならば彼はいったい何なのだろうか? 閉鎖的? 狂人? しかしこれでもまだ足りない。
閉鎖的、もしくは狂人にしては信頼され、周囲への貢献も行っている。得た情報を格安で流すこともあれば窮地のプレイヤーを助ける行動も起こす。無益な人助けもしたという噂話も聞くほどだ。
それからもアスナはしばらく分析を続けたが、結局アスナは思考での段階ではまったくスバルの分析を出来なかった。むしろ謎は深まるばかりだ。もしかしたら彼はミステリアスであることがアイデンティティなのだろうか。いや、それもないだろう。ギルドにも属さずに有能さという理屈だけで団長を始めとする攻略組トップと並べられるなど、とても信じられない。
攻略組の中でも屈指の実力者と評されるアスナでさえ団長にはまるで敵わないと思っている。実力主義者であるアスナですら自分の上に団長を置き、その上下関係を認めている。そしてスバルとヒースクリフが同格であるということもまた、否定しきれないほどに心の隅で思っていることだった。それはやや遠回しではあるがアスナにとってスバルも格上の存在だという意味にも成りえる。
「……いっそ実力を測る程度の気持ちでいったほうが
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