2.着任
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「よし、やるか」
自分に気合を入れつつ、執務室の整理をはじめた。
整理と言っても、そんなに多くの荷物はないからそれほどにはかからないだろう。
必要な物だけ準備が終わったところで、遠慮がちなノックが聞こえた。
「開いてるから、どうぞ」
「時雨、入室します。遅くなって申し訳ありません」
無理もないが、少々緊張の色が見える。
「何、遅くないさ。それより、体は冷えてないかい?」
「はい、お風呂へ行く時間をいただきありがとうございました」
私は彼女に敬礼をし、着任の挨拶を行った。
「それは良かった、おっと忘れないうちに、本日付で高水鎮守府に着任した伊道成宗、階級は少佐。よろしくお願いするよ」
一応軍組織、もっと形式建ててやるべきなのかもしれないがこのくらいでいいだろう。ここには上の目もないしね。
そしてまだ緊張して表情が硬いままの時雨は、きちっと敬礼をしつつ僕に続いた。
「僕は白露型駆逐艦二番艦の時雨です、これからよろしくお願いします」
「さて、時雨。君に最初の指令を出すよ」
彼女は神妙な面持ちで私の指令を待った。
「もっと、楽にするように。敬語もなしでいこう」
「はいっ、拝命します。もっと……、って、えっ!?」
今まで硬かった表情が、困惑の表情に。うん、かわいいな。
「確かに私は君の上官に当たるけどね、どうも苦手なんだ」
「苦手……ですか?」
「うん、形式張ったものがね。立場上そういうのに縛られることが多いから、どうにも疲れてね」
できるだけ軽い口調で話しているつもりだが、彼女はすごく真剣に聞いている。まだ緊張しているのか、真面目な子なのか。多分、両方なんだろう。
「なので、指令。ここにいる時は楽にするように。協力してくれるかい?」
「提督の指示に従います、じゃなくて、従わせてもらうよ……で、いいのかな?」
不安げに言う時雨の頭をぽんとなで、
「よろしい、それじゃあらためてよろしく」
「うん、よろしくお願いしま……するね」
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