第三十九話 古都での死闘その七
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そしてだ、それは菖蒲もだった。その剣に氷を宿して突きを繰り出すと共にその氷を矢として怪人に向けて放つ。
その一撃一撃でだ、怪人を攻める。だがその相手である怪人はというと。
上半身の動き、そしてフットワークでだ。ボクシングのその二つの動きで。
菖蒲のその攻撃をかわしてだ、攻めて来ている菖蒲に言うのだった。
「いい攻撃だね」
「それでもなのね」
「うん、僕を倒すには及ばないよ」
それには、というのだ。
「残念だけれどね」
「確かにいい動きね」
菖蒲は突きを繰り出し続けながら言った。
「貴方の動きは」
「君の攻撃を充分かわす位にね」
「上半身の動き、それに」
菖蒲は攻撃を続けつつ冷静に見ていた。
「足の動きね」
「そう、このフットワークでもね」
今も俊敏に動きつつだ、怪人は菖蒲のその攻撃をかわし続ける。ボクシングの動きのフットワークはまさに蝶の様だ。
「君の攻撃をかわしているんだよ」
「そうね、けれど」
「けれど?」
「それだけかしら」
言葉から表情を消しての言葉だった。
「貴方の動きのレベルは」
「まだ動けるっていうのかな」
「より速くね」
こう怪人に対して言うのだった。
「動けるのではないかしら」
「言うね」
怪人は不敵な声で菖蒲に返した。
「僕の実力はこんなものじゃないっていうんだね」
「違うかしら」
やはり声から感情を消して言う菖蒲だった。
「貴方は」
「勿論だよ」
怪人は不敵な声のまま、菖蒲の言葉とは正反対の表情のそれで返した。
「これで終わりじゃないよ」
「そうね、やはり」
「そして君がそれを見たいのなら」
「見せてくれるのね」
「うん、見せてあげるよ」
こう言ってだ、怪人は。
その身体の動きを速めた、すると。
身体が二つ三つとなりだ、そして。
十に分かれた、そしてその十の身体で。76
菖蒲との間合いを詰めて来た、そこからだった。
攻撃を仕掛けようとする、その怪人を見てだった。
菫はその顔を曇らせてだ、こう言った。
「この動きはね」
「うん、その速さでね」
「分身しているわね」
「菊ちゃんと同じね」
「私でもそこまで速く動くとなると」
その菊も言って来た。
「相当なものよ」
「分身するにも」
「分身の術は幻術の時とああして素早く動いて残像を残す場合があるけれど」
勿論今の怪人は後者である。
「相当動きを集中させないと」
「駄目よね」
「出来るものではないわ」
十の身体にもなる分身はというのだ。
「そう簡単には」
「そうね、けれど」
「あの怪人はしているわ」
「全神経を集中させているのね」
「あの怪人の身体能力でもそうね」
こうも言った菊だった。
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