四十一話:不幸の始まり
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遺伝なのだなと理解する。そして同時にどこまでも平穏で変わり映えの無い日常に生きているルドガー達が朝食を食べ終わり、後片づけをするというこれまたどこにでもありそうな光景の中で違和感を感じ取る。
それはテレビから流れるニュースから聞こえてくる単語だ。『自然工場』『クランスピア社』『エレンピオス』クランスピア社はルドガーが入社に失敗した会社だという事は知っているが『ティシュから空中戦艦まで』というキャッチコピーは異常だ。しかも政府と連携すら取れる企業らしい。
しかし、それだけの会社なら一度は耳にしていてもおかしくはないはずなのだが誰一人として聞いたことがない。『自然工場』に『エレンピオス』という名前も聞きなれないものだ。そこで黒歌達はルドガーの出身がどこであるかを聞いたことがないことに気づく。冥界で拾われる前にどこに居たのかは誰も知らないのである。
〔本日十時、トリグラフ中央駅から式典用の特別列車が運行され、記念セレモニーには、クランスピア社社長ビズリー氏ら、多くの著名人が出席する予定となっております〕
『特別列車……お前の勤め先から出発するんだな』
『うん』
『そういや、なにか欲しい物はあるか? 就職祝いってやつだ』
そう言われてルドガーは少し考える。そしてふと現在、ユリウスがメンテナンスをしていてテーブルの上に置いてある、真鍮と銀の懐中時計が目に入る。ルドガーにとっては兄がいつも大切に手入れをしている物なので小さい頃から憧れていたものだ。だからこそ、ダメだろうなとは思っていたが言ってみた。
『兄さんの時計が欲しい』
『っ! ……こんな古いのを? 時計ならいい腕時計を買ってやるよ。ああ、ネクタイがいいかもな。駅で大勢の客相手に働くんだ。身だしなみは大切だぞ』
ルドガーが時計を欲しいと言った瞬間、ユリウスの顔が僅かにこわばるが直ぐに何でもないように取り繕って話を逸らそうとする。ルドガーは気づかなかったがその様子に黒歌達は眉をひそめて顔を見合わせる。ユリウスは間違いなく何かを隠していると全員の意見が一致する。
「あの時計って……骸殻を使う時に必要な物よね?」
「ええ、リドウもヴィクトルも確かに同じ型の時計を持っていました」
「という事は、ユリウスさんは……ルドガーさんに骸殻を使わせないようにしているということでしょうか?」
ヴァーリの問いかけにアーサーが頷き、ルフェイが推測を立てる。しかし、なぜユリウスがルドガーを時計から遠ざけようとしているのかの本当の理由はまだ彼等には分からなかった。黒歌が話し合っている間にユリウスは仕事の時間だと言って時計を持ち家から出て行ってしまった。そんなユリウスに続く様にルドガーも家を出ていくと再び場面が変わった。
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