四十一話:不幸の始まり
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匣《オリジン》の研究の資金が足りない為にリドウに足元を見られているのだ。
『ね、他の方法を考えようよ』
『ああ、身内に泣きつく手があるよな。例えば、兄貴にとか』
『……っ!』
リドウの煽るような言葉にルドガーの自尊心が傷つけられ、サインをする決心を固めて契約書にサインをしてしまった。ルドガーはこれでどうだと半ばやけくそ気味にノヴァに契約書に渡す。
『……契約成立です。では、貸し出した2000万ガルドをリドウ様の口座に』
『「「「ふえてる!」」」』
思わず、黒歌達とエルの言葉がシンクロしてしまう。先程リドウが言ったのは1500万ガルドだ。そして今ノヴァが読み上げた額はさらに500万増えた2000万ガルドだ。黒歌達はガルドという通貨の基準を知らないがそれでも今までの様子から到底払える額ではないことが分かったためにリドウを記憶の中でありながらも睨みつけてしまう。
『悪い、君の家族の治療費を忘れてた』
『ンナァ……』
「猫からも治療費をふんだくるなんて卑劣過ぎるにゃ!」
「……全くです。……ここから殴れないのが心苦しいぐらいです」
申し訳なさそうに鳴くルルに対して同じく猫として思うところがあったのか黒歌と小猫がリドウに今にも殺さんとばかりにガンを飛ばすが本人は記憶の中の為に効果が無い。おまけに現実においても既にヴィクトルに始末されているためにこの苛立ちはどこにも晴らせないだろう。
『また治療が必要になったら呼んでくれ。格安で相談に乗るよ』
契約を結べたことを確認すると最後にこれでもかというほどの嫌味を言い残して去って行くリドウ。残されたルドガーはノヴァに気休めの言葉をかけられるが、その程度では事の重さが軽くなるわけもなくただ重い溜息を吐くだけである。こうしてルドガーの旅は始まりを告げたのである。
「部長……今日ってルドガーの初出勤ですよね?」
「そうね……イッセー」
「いきなり、痴漢冤罪にかけられましたよね」
「そうね」
「あっという間に、列車テロに巻き込まれましたよね」
「そうね」
「目が覚めたら高額負債者になりましたよね」
「イッセー……それ以上は悲しくなるから言わないで頂戴」
ルドガーのあまりの不幸の連鎖に涙をこぼすイッセーとリアス。他の者も同様にルドガーの境遇に憐れみ、触れるのならポンと肩を叩いて美味い物でも食いに行こうと誘ってあげたい気分になる。しかし、彼等はまだ知らない、これが不幸の始まりに過ぎないという事を。
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