四十一話:不幸の始まり
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ルドガーが走り去っていったと思うと突然、景色は移り変わり洞窟のような場所をルドガーが走って行き、黒づく目に仮面という何とも怪しげな格好の男達を従えた一人の白いコートを着た眼鏡をかけた背の高い男性を目指している場面になり黒歌達を驚かせた。そしてルドガーの目指している男性を見て黒歌はルドガーにどことなく似ていると思った。
『ギリギリだな、ルドガー。お前、これがクランスピア社の入試試験ってわかっているんだろうな?』
『わかっているよ、兄さん……ただ夢見が悪くてさ』
『兄さん』ルドガーのその言葉にその様子を見ていた黒歌達の視線は一気に男性に視線を集中させる。ルドガーの兄は一見すれば穏やかな人物で荒事には不向きの様に見えるがよくよく見ればその顔と漂わせる雰囲気はかなりの手練れという事を示している。その事に気づいたヴァーリや美候は手合わせしたいと呟くが、すぐにここが記憶の中だと気づきがっくりと肩を落とす。
『兄さんはよせ。今日の俺は、お前の試験官だ。ユリウス試験官と呼べ。クランスピア社の試験はコネでどうにかなるものじゃないぞ』
『はい、ユリウス…試験官』
ルドガーの兄―――ユリウスの指示に従い、かなり言い辛そうにユリウス試験官と言うルドガー。そんな様子にユリウスは一瞬柔らかな兄としての微笑みを浮かべるがすぐに気を引き締めて試験官としての顔に戻る。
そんな微笑ましい様子を眺めながら祐斗はルドガーの現状を考察していく。まず、ルドガーはクランスピア社という会社の試験に来たという事、そして何故かは知らないが記憶であるにもかかわらずルドガーの年齢は間違いなく自分よりも上だという事。そして何より―――
「とても殺し合いをするような兄弟には見えない……」
「ええ、とても仲の良い、どこにでもいるような兄弟ですわ」
祐斗の呟きに朱乃も同意を示す。他の者も同様の意見だ。ユリウスとルドガーはどこにでもいる兄弟なのだ。変わった点は見受けられない。そう、表面上では。
『それにしても、夢見が悪いなんてどうしたんだ?』
『……兄さんに殺される夢を見たんだ』
『俺が、お前を殺した…?』
ルドガーのその言葉にユリウスの声が僅かに重く低いものになり、目も鋭くなったことにルドガーは気づかなかったが、黒歌達は第三者の視点から見ていたためにそれに気づいた。そして何より、殺されたという単語に反応した。そしてユリウスの次の言葉に何かヒントがあるのではないかと集中するがすぐにそれは徒労に終わる。
『ま……お前が俺のトマトシュークリームを勝手に食ったら、そうなるかもな?』
「「「「ああ、この人、間違いなくルドガーの兄弟だ」」」」
ユリウスのトマト好きが発覚したことにより、満場
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