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真夏のアルプス
第1話 ピッチャーズ・ハイ
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うでもなく着替え始める修斗に、隣のロッカーを使っている少年が痺れを切らしたように声をかけた。ニキビ面で、ハの字眉毛の、どこか困ったような顔をしている少年だ。修斗は記憶を探った。脇本、脇本真之とかいったか。日新中等部軟式野球部の主将だ。


「……」


脇本はハの字眉毛を精一杯引き締めて、自分より背の高い修斗に無言で詰め寄った。修斗は見下ろしながら、少し身構える。睨み合う時間が数秒続いた後、脇本が修斗の両肩を掴んだ。


「……何でお前、州大会じゃ一回戦負けだったんだよ〜!!」
「?」


突然半泣きの顔になった脇本に、修斗は面食らった。


「普通市大会で勝ったら、州大会でも勝つだろぉ〜!?平気で州大会じゃクソ田舎の群代表になんか負けやがってぇ〜!俺ら、先輩らに死ぬほどバカにされたんだぞぉ!お前らは市外のチームに負けるような連中に三振12個取られて完封されたんだって!どうしてくれるんだよぉ〜」
「え?あ、あー…そりゃ悪かったな」


修斗はきょとんとして頭をかいた。日新中等部に勝った修斗の上一色中学は州大会出場を決めた。山吹州大会は山吹市内代表4つと、市外の田舎の地区代表4つの計8校で行われ、大都会山吹市の代表は例年圧倒的な強さを誇る。が、日新中等部に勝った翌日の市大会準決勝で0-6の惨敗を喫した上一色中は、州大会でも市外の代表相手に0-5であっさりと敗退。日新に勝ったが為の燃え尽き症候群だの、そもそも日新戦がフロックだっただの、修斗達も色々からかわれたが、州大会にすら出られなかった日新の方は、上一色中のその後の敗退ぶりによって更に評価を下げられてしまったらしい。お気の毒に。修斗は至極他人事のような感想を抱いた。


「おい、一年集合かかったぞ〜!早くグランドに来な!」


未来が一年の部室に戻ってくる。修斗は慌てて、残りのユニフォームを着込む。脇本の恨めしそうな視線はまだ修斗から離されなかったが、そんな事はどうでも良かった。

過去は過去。州大会出場も、敗退も、そんなのはもう関係のない話。自分がこれからやるのは、高校野球なのだから。




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一年生達は、まだ入学前の春休みという事もあって、簡単な体幹トレーニングや走り込みなど、基礎的な練習をこなしていた。マネージャーの未来が一年生の練習を監督しているのは、ただ下級生のマネージャーが一年のお守りを押し付けられたというより、未来が選手に対してもズバズバモノを言う気の強い女で、つまりは適任だから任されているらしかった。少しでも姿勢の乱れや手抜きがあったら、遠慮なく指摘してくる。修斗相手には、そこに例外なく蹴りが加わって、周囲はあまりにバイオレンスな未来に若干引いた。



「なぁ、
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