第1話 ピッチャーズ・ハイ
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美人の部類に入るが、こうやってすぐ手を挙げられている修斗としては、自分の姉をイイという輩の気持ちは分からなかった。
「こらこら、姉弟喧嘩はよそでやれ。未来、まずは部室に連れてってやれ。練習着に着替えて、今日はエスカレーター組と一緒に基礎練からな」
「は、はい」
内田に窘められた未来は少し顔を赤くして、踵を返し、修斗を引っ張った。修斗は未来のその手に引きずられながら、きょとんとした顔で尋ねる。
「なぁ姉ちゃん」
「何よ」
「キャプテンと姉ちゃん付き合ってんの?未来って……」
「バカ!あの人は誰にでも名前呼びなのよ!」
修斗はまた殴られる。顔を歪めながら、修斗は「別に殴らなくても良いだろうがよ」と、呆れ声を出した。
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「ここがあんたら1年の部室よ」
「1年にも部室なんて与えられるんだな」
「金が余ってんのよ、ここ。多分全員分のロッカーもあるわ」
日新学院のクラブハウスは、もはや校舎の棟一つ分の大きさがあり、各クラブの部室がひしめいている。その中には、アイドル研究会など、これ本当に認められてるのか?と思われるものまで。野球部には部屋3つが与えられている。部屋一つにロッカーは25個ある。破格だ。
未来が勢いよくドアを開ける。中には、修斗と同じく坊主頭の少年達が集まっている。パッと修斗の方を向いたその少年達の表情は、和やかな談笑ムードから一転、キッっと鋭くなった。
「お前……」
「やっと来たか」
「上一色中の津田…」
その少年達の顔には、津田は見覚えがある。そして、表情が変わった理由にも察しがついていた。
(3番ショートの岩崎、4番キャッチャーの佐田、打順は忘れたけどサードの脇本、エースの早川……こいつら、日新の中等部の連中だよな。俺が市大会の準々決勝で完封した……)
前年度の全中予選、山吹市大会の準々決勝。山吹市の州大会進出枠は4。前年度州大会優勝の日新学院中等部が、平凡な区立中学に完封負けを喫し州大会進出すら逃した。少し騒ぎになった出来事であるが、その区立中学のエースが修斗だったのである。その修斗はこの春から日新学院の高等部。内部進学してきた中等部の面々とチームメイトになった、と言う事である。
「同級生に挨拶しときな、また後で迎えに来るから」
弟を一人残して、未来は一年部室から出て行った。修斗はしれっとした態度で、適当にそこらのロッカーを開き、肩にかけたバッグをぶちこんだ。周囲の視線が自分に向いてるのは十分すぎるほど分かっているが、修斗は野郎の視線を喜ぶような男ではない。
「……おい」
特に周りの皆に何を言
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