参ノ巻
死んでたまるかぁ!
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あっ。しまった、見つかった…。
がさごそ言う音と共に、ぺかりと薄暗闇に光が射して、あたしは惟伎高の嗅覚の鋭さを呪った。
「おい、なんでこんなところにいるんだァよ」
竹で編まれた葛籠の蓋を持ち上げた惟伎高は呆れたように言った。
あたしは俯せで四肢を抱え、ぴったりと葛籠に嵌まったまま、微動だにせず、口をきゅうっと引き結ぶ。
あたしは岩、岩、岩…。岩なのよ。喋らないし動かないただの岩・・・。
「ピィ?」
惟伎高の声にも無視を決め込む。
「おーい、ピィ?」
惟伎高は訝しげにあれやこれやとあたしに声をかけていたが、いきなりすんと黙り込んだ。
「・・・?」
それがあんまりにも音がしないので、あたしはもしや惟伎高がその場から立ち去ったんじゃないかとぱちりと薄目を開ける。
すると、それと同時に、変わらずそこにいたらしい惟伎高が、やたら楽しそうなお声で言った。
「知っているかピィ?その昔、天岩戸に立て籠もる天照大御神をどうやって誘い出したか」
「ギャーン!知っております」
あたしは思わず葛籠から飛び出した!
飛び出た勢いで畳に這いつくばり、あたしが悔しさで唇を噛みしめながら惟伎高を見上げれば、奴は足下に落としていた袈裟を拾い上げるところだった。
そのままあたしを見て、不適ににやりと笑う。
「やあやあ天照の姉君様。その美しい顔を再び見ること叶い、この不肖の素戔嗚尊大変嬉しく思っております。私の美麗な舞いをお目にかけること適わずそれは大変残念ですが・・・」
「いらん!あああ、あんた、なんで袈裟脱いでたのよ、まさか、あたしが出てこなかったら、本当に・・・」
「ふン、古典もあながち馬鹿にしたもンじゃねェってことだなァ」
「神話を実際に試そうなんて考えるアホはあんたくらいよ、この生臭坊主!」
あたしは悔し紛れにぺいっと被ってた尼頭巾を投げつけた。それは惟伎高に掠りもせず、はらりと足下に落ちる。
むかぁしむかしのお話。天照大御神というエラい神様が、弟の悪戯に辟易して、岩の中に立て籠もってしまったことがある。
太陽の神様がそうして隠れてしまったから、世界は闇に包まれた。沢山の悪いことが起こって、八百万の神はどうにかして天照大御神を引っ張り出そうとあの手この手の策を考える。固く閉じられた岩戸の前で、天宇受売命(ア
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