参ノ巻
死んでたまるかぁ!
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で冷やしに行った方が早いと思ったけれど、あたしはもう気軽にこの寺を歩き回ることができない。高彬がいるうちは。
・・・高彬。
ふと、あたしは高彬がいるであろう客室の方に顔を向けた。
高彬だって、いつまでも石山寺に逗留しているわけもない。明日明後日にはきっと発つ。そしてあたしも、いくら居心地が良いとは言え、惟伎高と高彬が交流があるとわかってしまった以上、長くここにはいられない。
そうすれば、もう、二度と会うこともないのだろう。
あたしは事あるごとに、高彬を兄上と比べては散々貶してたけど、高彬はいい男だ。婿に欲しがる家なんて沢山在るし、もしかして、もう婚姻の話もひとつやふたつ進んでいるかも知れない。
あたしみたいに、こんなに乱暴じゃ無くて、もっと美人で、心根の優しい人が・・・。
そこまで考えたあたしは、ふと異音がするのに気がついた。乱れた足音が、客間の方角からこっちに、一直線に向かって、くる!?
惟伎高じゃない!
あたしは咄嗟に思った。惟伎高じゃないとしたら、誰!?こんなに慌てて、部屋ばかりで他は何も無いようなこっちに迷わず向かって来る人は!
まさか・・・高彬!?
足音はどんどん迫ってくる。
逃げる間もなくスパァンと大きな音を立てて障子が開いた。あたしは腰を浮かせたままの姿勢で固まった。冷や汗が滝のように滲む。
「尼君様っ!」
しかし飛び込んできたのはなんと抹だった!
「えっ抹!?」
「ああ尼君様っ!今そこで庵儒様にお会いしまして尼君様はここにいると・・・ご存じでしたら教えて頂きたいのですが、あッ!庵儒様にお伺いすれば良かったんですねでも急いでいるご様子でしたしこんなことで長くお引き留めするのも気が咎めてしまいまして尼君様にお伺いしようかと思いまして、先程ご存じのご様子でしたし・・・あでもご存じで無ければそれはそれでまた庵儒様にお伺いするので大丈夫なのですがあっ尼君様!?そのお手はどうなされました!?」
「落ち着けー!」
怒涛の勢いで捲し立てる抹に向かってあたしは叫んだ。
なんだかよくわかんないけど抹の気分が見たこともないくらい高い!
「とりあえず落ち着きなさい!手は大丈夫!今庵儒が冷えた井戸水汲みに行ってくれてるから。そんで、なんだって?あたしに聞きたいことがあるの?それでそんな急いできたの?」
「は、はい。あの・・・」
抹は口籠もって赤くなる。なんだ。抹がここまで急いであたしに聞きたいこととはなんなんだ。腕は痛い
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