参ノ巻
死んでたまるかぁ!
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それはまるで、沸き立つ血を押さえられない、肉食獣のような目。そこに冗談なんてものは一欠片すらも入っていない。
あたしは蛇に睨まれた蛙のように、一瞬で全身が総毛立った。雷のような寒気が背筋を走る!それは、腕の痛みを忘れるほど。どうしよう、と言う言葉がぐるぐると頭を回る。こんな惟伎高、見たことない・・・。
喰われる−・・・。
惟伎高の瞳に、驚きを隠せないあたしが映る。獲物を狙うような、惟伎高の瞳が細められる。その中のあたしの顔に、はっきりと怯えの色が滲んで、見えなくなる。
惟伎高は眉根を寄せながら、何かを堪えるように目を閉じていた。そうして、ゆっくりと、あたしの手首を掴む惟伎高の腕から、力が抜けてゆく・・・。
「・・・わかったァか」
惟伎高が言った。力の籠もらない声だった。目を開けた惟伎高は、もういつもの惟伎高の顔に戻っていた。
「・・・わかった」
あたしは先程の動悸が収まらないまま、言葉少なにそう言った。
普段のらりくらりとしている惟伎高も武人だということを、厭というほど理解した。
「すまねェな。やりすぎた」
惟伎高はあたしと目が合うと、ふっと自分を嘲るように笑う。そして、あたしの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「もっと警戒しろと、そう言いたかっただけの筈なんだァが・・・」
「・・・痛かった?ケリ・・・」
「おお、痛かったァぞ?でも下手に抵抗するのは逆効果だと言うのもわかっとけ。特に・・・ピィ、相手が手加減しておまえと接してる場合は、な」
惟伎高はほんの一瞬戯けてからあたしの腕を掴んで持ち上げた。そこにはくっきりと、赤く手形が残っていた。これは時を置かず、青紫に変色して数日は治らないだろうと誰の目から見てもわかるものだ。惟伎高はそれを見て、苦虫を噛み潰したような顔をした。やり過ぎたというのは、嘘ではないのだろう。
でもそれを言えば、あたしもやり過ぎた・・・の、かな。思わず、惟伎高の堰を壊すほどに。
「・・・肝に銘じる」
いつになく従順なあたしに、惟伎高は頷く。
「・・・痛ェ、よな、すまねェ・・・」
それからすっくと立ち上がった。
「何か冷やせるものを持ってくる」
「うん。お願い」
あたしは素直にそう言った。惟伎高が立ち去って高揚した気分が戻れば、残るのは腕の痛みのみ、だ。
「っ痛ぅー・・・あいつどんな馬鹿力してんのよ」
ジンジンと痛みを訴える腕を押さえて余程自分
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