1部
37話
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った。
「な、なに!?」
自分の体が金縛りにでもあったかのように動かなくなった事に対して、思わず彼女は声をあげてしまった。どうやら、自分の状況が把握できていないようだ。
既に糸を操作出来なくなった事により幻術は解除され、シカマルはゆっくりと立ち上がった。そして、彼女に現状の説明をする。
「ふーようやく影真似の術成功」
「な、何を言ってる!?そんな、お前の影なんかどこにも……!?」
彼女は影を見るために目だけで下を見て、不自然に濃い糸の影に気がついた。
「こんな高さにある糸に、影が出来るわけねーだろ。
俺は自分の影を伸ばしたり、縮めたり出来んだよ」
彼女に分かりやすく糸の影を分かりやすく、蛇のようにウニョウニョと動かしてみせる。
「……だが、それでどうやって勝つというんだ?たかが体を縛っただけで何ができるというんだ?」
「縛るだけ?お前、俺の術の名前を聞いてなかったのか?
影真似の術、縛るだけじゃなくて俺と同じ動きを強制させる術なんだよ、これは」
そう言いながら、腰のポーチから手裏剣をキンに見せつけるように取り出す。それに連動するようにキンも同じ動きで手裏剣を見せつけるように見せる。
「馬鹿か!?お前の言葉通りならば私が攻撃したら、お前も同じように傷つくんだぞ!!」
「んなこたぁ解ってるよ……手裏剣の刺し合いだ。どこまでもつかな?」
「馬鹿、よせ!!」
女の自分と男のシカマルであれば千本のダメージを考慮しても、先に力尽きるのは自分だと察したのだろう。
しかし、彼女の思惑とは関係なく互いに投げた手裏剣は正しい軌跡で互いを目指す。通常であれば容易く回避できるが、彼女はシカマルの動きと強制的に連動させられている。
故に彼女は今から始まるであろう、血みどろの手裏剣の投げ合いに対して覚悟するしかない。
だが彼女の想像を無視するかのように手裏剣が刺さる寸前、シカマルが上体を逸らした。
彼女はシカマルが投げ合いになど考えておらず、自分に恐怖を抱かせてギブアップさえるつもりだったと判断したのだろう。
「ふん、所詮ハッタリ……ガッ!?」
言葉を言い終わらぬ内にキンは後頭部を壁に打ち付け、あっさりと意識を失った。
一方シカマルは身を逸らした勢いのままブリッジをした状態からで起き上がって、やれやれといった様子で気を失った対戦相手を見る。
「忍びなら状況や地形を把握して戦いやがれ。
お互い同じ動きをしても、俺とお前の後ろの壁との距離はお互い違ったんだよ。手裏剣は後ろの壁に注意がいかないよう、気を逸らすのに利用しただけだ」
シカマルは懇切丁寧な解説を極めて面倒臭そうに行う。彼の言葉の途中で、試験官は淡々と事務的な口調で試合終了を告げた。
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