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日向の兎
1部
37話
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サリ……」
よくある常套手段ではあるものの、即座にそれを判断したシカマルに私は少なからず興味を抱く。戦いにおいて冷静さを失わず、相手の策を把握するというのは基本的な事でありながら中々上手くいかないものだ。
「お喋りな奴だ」
キンは彼の言葉を遮るように複数の千本を投げ放つ。
不意に響いた鈴の音に対して、シカマルは半ば無意識に後ろを振り返ってしまう。そこには先程の壁に刺さった鈴付きの千本が微かに動いて、音を鳴らしていた。
どうやら初手の千本は糸で繋いでいたらしく、彼女はそれを操作しているようだ
シカマルがそれを判断するまでにそれほど時間を必要としなかったが、その僅かな時間は投擲された千本が彼に到達するには十分な時間だった。
彼は咄嗟に急所を両手で庇い、その両手に千本が突き立った。
シカマルの動きが一瞬止まったのを見逃さず、キンは鈴を糸で操作する。
すると、シカマルはぐらりと体勢を崩して、苦しそうに地面に膝をついた。そんな彼を嘲笑うような表情を浮かべて、彼女は余裕の態度で解説を始める。
「この特殊な鈴の音の振動が鼓膜から脳へと直接働き掛ける。そしてお前に幻覚を視せるのさ」
彼女の説明を聞いた瞬間、私とテンテン、カンクロウはほぼ同時に呆れた口調で同じ言葉を言った。
「手ぬるいな」
「手ぬるいよ」
「手ぬるいじゃん」
千本とは基本的に戦闘用の忍具としてはあまり優れたものではない。寧ろ戦闘にも使える医療用忍具というべきものだ。
確かに千本は視認しずらいという強みはあるものの、急所を正確に射抜くかツボを寸分違わず突かない限りは大した脅威にはならない。
無論、戦闘中にそれを達成することは完全な不意打ちでもない限りほぼ不可能だ。
それ故に千本を扱う場合はその視認しずらいという利点を使って、毒などを仕込むのが一般的だ。
もし毒を仕込んでいればこれで終わりだったのだ。
「さぁ、ゆっくり料理してあげるよ」
そんな私たちの考えを知る由もないキンはシカマルに千本を投げ、じわじわと嬲る。
「今度は五本、次は七本、お前がハリネズミになるまで続けてやるよ」
何故、そんな意味のない行動をするのか理解できないな。相手の動きが鈍っているのであれば、手裏剣のような殺傷性の高いものを投げたほうがいいだろうに。
仕留めるまでに時間をかければかける程、相手に策を考えさせる時間を与えるだけだという事が何故わからん?
その証拠にシカマルの表情は明らかに勝利を確信したものへと変わっている。
「嘘吐き女め。最初にすぐ終わらせるって言ったじゃねえか」
「じゃあこれで終わりにしてやるよ」
自分の優位性を信じて疑わないキンは止めの一撃と言わんばかりに急所を狙うが、その優位性はとっくに崩れ去ったことを理解するのにそう時間は掛からなか
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