第七十四話
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「アスナの反応にこの場所……がぜん信用度が高くなってきたな」
「ああ……」
もう一秒も待てないといった様子のキリトに応えるように、エレベーターはすぐさま最上階に到達する。そこに広がっていたのは、やはり病院のような無機質な空間であり、人の気配すらも感じさせない。
「こっちに隠し通路があります……」
ユイも一見、平静にナビゲーションを続けていたが、そのスピードが徐々に早くなっている。キリトもユイも、自分たちの歩くスピードが早くなっていることに気づいていないようだったが、あえて口には出さないでおく。
そして幾つかの隠し通路を越えていくと、一つの部屋へとたどり着く。
「ここにアスナが?」
「はい……確かに、ママの反応はこの部屋からあります」
逸る気持ちを抑えながらも、ユイが例のカードキーから転用したコードを使ってロックを解除すると、キリトが油断なく部屋の中に突入する。
扉の向こうには、美しい夕焼けが広がっており――それは俺たちが、いやこのゲームをプレイしてる者たちが飛んできた、アルヴヘイムの空だと感じさせた。部屋は、いつだかエギルに見せられた写真とそっくりであり、その通りに巨大な鳥籠が設置されていた。
「――アスナ!」
「ママ――ママ!」
我慢の限界だとばかりに、キリトとユイが同時に叫んだように、その鳥籠の中には彼女が――アスナが囚われていた。俺にさえ見間違えようもなく、キリトとユイは彼女が囚われていた鳥籠に走っていく。
「キリトくん……ユイちゃん……?」
鳥籠の中にいたアスナの表情が驚きの後、目に涙を浮かべた笑顔に変わり――部屋の入口にいた俺を……いや、その向こうを見て、再び驚愕の表情に包まれた。
「――ショウキくん! 逃げて!」
その警告の声とともに、背後からの気配に反射的に日本刀《銀ノ月》を振りかぶって、振るわれた攻撃を受け止めると……そこにいたのは。
「ようこそ英雄くんたち。歓迎するよ、盛大にねぇ!」
醜悪な笑みを浮かべる妖精王と――
「……リ、ズ……」
――俺に向かってメイスを振り下ろす、今にも泣き出しそうな顔をしたリズの姿だった。
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