エピソード29 〜万丈目去る〜
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side万丈目
「今にみてろよ……。」
月一試験と昇格試験で負かしてくれた遊城 十代と三沢 大地。そして、あの女……じゃなくて、入学式の時にワンキルをかましてくれた叢雲 紫苑。
俺に苦汁を飲ませてくれた奴らの顔が走馬灯のように記憶が巡る。
「絶対にリベンジしてやるからな……。」
自分に言い聞かせるように呟き、いざ船に乗って出発しようとすると背後から声をかけられる。
「や〜、いたいた。なんとか間に合ったみたいだね。」
振り返るとブルー女子の制服を身に纏った女性が立っていた。
まさか、明日香さんが……!と思ったがどうやら違うらしい。
その女性は透き通るような銀糸を腰まで伸ばし、やんわりと微笑み立っていた。
……どこかで見た気が
「っ!?まさか、叢雲 紫苑!?」
「いや、その間違えはひどいと思うよ!?」
俺の発言に即座にツッコミが入れられる。どうやら不正解らしい。
なんだ違うのか……。だが、あいつによくに似ているな。髪の毛とか、目の色とか……。しかし、まぁ、違うか。身長とか、性別とか。あいつは男のコ……。
「初めてましてかな?私は紫苑の姉、叢雲 翠。君が万丈目 準君であってるよね?」
「?そうですが、何のようですか。用があるのなら、手短にお願いします。」
ちらりと停泊させているボートに目配せしつつ、早く出発させろアピールをする。
「まぁ、特にこれと言った用はないけど……。なんてゆうか、遊城くんや天上院さん達やうちの弟が君を探しに行ったから私も便乗しようかな〜って思ってんだけど。」
「っ!?明日香さんが!けど、なんで……。」
明日香さんが俺の事を探していると聞いて少し色めきつくがすぐに煩悩を振りはらう。
だが、なぜ俺を探すんだ?明日香さんはともかく、十代たちにはひどい仕打ちをしたと思っている。
「さぁねぇ。どうやら、君が崖から身投げでもしないか心配だったのかもね。なかなか慕われてるんだね。」
翠さんは『慕われている』と言ったがそれは違う。俺についていた取り巻きだって、俺が学年でトップだったから、強いから従っていただけだ。その証拠に俺が落ちこぼれのレッドの遊城 十代に負けたら、見事に手のひらを返し、嘲笑いやがった。そして、俺は地位も名誉も全て失った!
「だから俺は強くなって俺をバカにした奴らを見返してやる!絶対に!」
「……そうなんだ。」
感情を抑えられず、途中から声に出してしまっていたらしい。だが、この人は憐れむような視線を送るでもなく、同情するわけでもなくただ静かに俺の口から出た感情を聞いていた。その表情をあえていうなら、弟を見守る姉と言ったところか……。
思い出したかのように湧き上がる怒りの感情を抑えようとし、
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