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リリなのinボクらの太陽サーガ
誓約
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かり掴まったのを確認し、俺とエレンはクラーケンが通ってきた穴に向かって飛び込んだ。首元に彼女の存在を感じながら、いざ潜ってみると……先には暗い闇しか見えなかった。
真っ暗な道のり、一秒も先が見えない未来、本当に正しい道を通っているか不明で精神を揺さぶられ、来た道までもとっくにわからない。この暗闇は俺達の今後を表しているのか……それとも何をしても無駄だという暗示なのか……。

だがそれがどうした? やれるだけやる、それで駄目なら結果を甘んじて受け入れよう。しかし、今はくたばるわけにはいかない理由がある。俺の背には“彼女”と同じ存在がいる。こんな所でみすみす死なせてたまるか!

だが……俺の決意など気にも留めず自然の濁流は更に激しさを増し、水中でまともに動けない俺達は翻弄されるのみ。背後から圧倒的な水流の力で押し出され、体力を一気に持っていかれてしまった俺は、抗うことも出来ずに意識が落ちかける。何とか背負っていた彼女を離さない様に抱き締めた所で、水の闇に俺達の姿は消えていった……。









「ゲホッ! ガハッ! ……外?」

俺は……まだ生きているのか? あんな所から生還するとは、いよいよ俺の肉体も人間離れしてきたものだ。しかし、よりにもよってこんな海のど真ん中を漂流している所で目覚めるとは、果たして運が良かったのやら悪かったのやら……。

周りには恐らくビフレスト北区が破壊された際に流された流木や家の破片が浮いており、その一部にエレンの身体は打ち上げられていた。小さく呻き声が聞こえてきたから、少なくとも死んではいないようだ。そして気絶間際に抱き留めたザジは……、

「う……あ……?」

俺の腕の中で意識が朦朧としながらも、彼女は確かに生きてくれていた。この時、俺は柄にも無くほっとした。自分でも意外な程、彼女の存在が俺の中で大きくなりつつあるのかもしれない。しかし……“彼女”以上になる事はあり得ない。俺の心は既に“彼女”に注がれているからな……。

「起きろ」

「……サ……バタ?」

「ああ」

「うち……生きて……って!? あぁ〜!!?」

「?」

「ううううう、うち! 男の子に抱かれ……あ痛っ!!? 腕が、腕がぁあああ!!?」

「はぁ……こんな時でも騒がしい奴だ」

赤くなったり泣いたり、表情の変化が激しいザジだが……そういう素直な反応が面白い。

「そっか……私……」

「そっちはどうだ、“真空波”?」

「……死んだはずのミズキと会ってきた。あれは……ただの夢だったのかしら? 私の生んだ妄想が形をとっただけなのかしら?」

「何の話だ?」

「ミズキがね……私に『生きて』って。せっかく助かった命を無駄にするなって……。あれが本当にあった事なの
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