誓約
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時間がかかったものの、変異による体形の変化が上手いことクラーケンの復帰の邪魔をしてくれたおかげで、何とか反撃されることなく自壊させ始める事が出来た。おかげで暗黒銃のエナジーも切れたが、放っておいても自滅するまで変異を進められたのだから問題ない。
まだもがいているクラーケンから視線を逸らし、さっき薙ぎ払われた二人の所へ駆け寄る。
「大丈夫か?」
「何とか……」
壁にぶつかった時の態勢が良かったようで、クラーケンの攻撃の威力に対してエレンは比較的軽傷だった。しかしもう一人、ザジは……。
「いたい……腕が……痛いよ……!」
彼女は右腕の関節が変な方向に外れていた。エレンと違って当たり所が悪く、骨折してしまったのか。俺はすぐさま止血剤で出血を止め、消毒液を塗る。その痛みで彼女は顔を歪めてその壮絶な痛みを伝えてくるが、体内に暗黒物質が入らないように治療は迅速に行わなければならない。
「あと、固定材となるものを何か……ッ!」
洞窟の周囲に視線を彷徨わせると、洞窟の最深部に青くフロスト属性が秘められた頑丈そうな尾を見つける。多分これが俺の探していた『水竜の尾』だろうが、今は固定材として使わせてもらおう。
すぐに確保したそれを固定材としてザジの患部に付け、包帯を巻いていく。痛みで呼吸が激しい彼女は、涙混じりにこちらを見つめるが、その目に非難や後悔といった念は感じられなかった。ただあるのは……“無力感”だった。
「はぁ……はぁ……サバタ、ごめんなぁ……うち、迷惑かけてばっかで……」
「バカな事を言うな。誰か一人でも欠けていれば、クラーケンは倒せなかった。おまえは迷惑なんかじゃないし、無力でもないぞ。このバカ」
「ほら……またバカって言った。魔女でもうちは繊細な女の子なんだから……っ〜! もっと優しくしてよ……」
「これでも精一杯優しくしているつもりだが? 応急処置の痛みなら我慢するしかない」
「あ〜あ……痛みも無く、怪我が治ればいいのになぁ」
「そんな都合のいい魔法があるものか……」
後にそんな魔法が異世界で実際に存在すると知るのだが、あったらあったで色々思う所があったのは別の話。
「ミズキの仇……結局あなたが討ってしまったわね、サバタ」
今なお断末魔の声を上げ続けながら暴れているクラーケンを、エレンが憂いのこもった表情で言う。
「……全員生きて勝ち、おまえも親友の仇も討てたのだから、最良の結果じゃないか」
「そう……ね。ミズキも……犠牲になった人達も少しは浮かばれる……といいわ。私なんかが死んでいった皆の気持ちを考える資格なんて無いんだろうけど」
「少なくともビフレストの街はまた襲われる心配が無くなった、それで満足しておけ」
「……ううん、私の心は
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