星屑編 導入
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とにかく駆けた。着の身着のままで逃げるうちをわざわざ追おうとは思わなかったようで、後ろに両親の姿は無かった。
でも……絶対的な味方だと思っていた両親からのまさかの裏切りで、うちの心は悲鳴を上げていた。涙が溢れて止まらなかった。拭っても拭っても、留まるところを知らなかった。足元がふらついて何度も転びながら、身体も心も深く傷つきながら、それでも走り続けた。
「うう……! ぐすっ……うあぁぁ……!! あああぁぁああああ……!!! うあぁぁぁわぁぁぁあああっ……!!!」
親に命を狙われて追い出されたうちは出来るだけあの家から離れようとして、いつの間にか街の外に出てしまっていた。太陽樹さまの結界の外、吸血変異とアンデッドが闊歩する世紀末世界に、何の装備も持たずに飛び出してしまった。
い、いけない……戻らないと……! いや……ダメだ、もうあの街に戻る事は出来ない。殺意に取り込まれたあの両親に見つかったら、次は逃げ切れるかもわからない。じゃあうちはどこに行けば……?
「……はは、そうだよ。魔女なんだから、世界中のどこに逃げたって居場所は無いんだ……」
そう気付いた瞬間、心が絶望一色に染まっていった。魔女には夢も希望も無い、持つ事すら許されないんだ……。
だけど状況はうちを更なる絶望に追い立ててくる。
ガシッ!
「むぐっ!?」
突然口元に布が当てられて、急に足に力が入らなくなって倒れてしまう。暗くなっていく意識の中で、大人数人の物と思われる大きな足音がいくつも聞こえてきた。
「こんなヘンピな所で女の子を手に入れられるとは嬉しい誤算だぜ!」
「クロロホルムも安くないんだ、商品にするんならもちっと丁寧にしようや」
「うっせぇ! 下手な追い込みよりさっさと捕まえとく方がマシだろうが! それにこいつの腕の傷は元からだっ!」
「いいからさっさと縛って荷台に放り込んでおけ。グダグダして他の連中に見つかりたくないだろう?」
「そうだな。一般人だけじゃなくヴァンパイアにも見つかれば終わりなんだし、人狩りも楽な仕事じゃねぇしな」
人狩り……それはこの世紀末世界において、吸血変異から辛うじて逃れた富裕層がアンデッドに対して、人間を文字通りの“盾”として使い始めた事から始まる。人狩りはヴァンパイアの襲撃によって家族を失った者や孤児をさらい、売る事で莫大な報酬を得ている。富裕層は人狩りから、アンデッドに対する使い捨ての“盾”を手にする事で、生き延びる確率を上げる。中には慰み物にしたりする者もいるが、基本的に立場の弱い人間や弱者は強者の生け贄になるのが、荒んだ人間社会の現状である。
そして……そんな人狩りの一集団に捕まったのだと理解するのと同時に、為すすべなくうちは気を失ってしまった……。
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